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第7週 「夢の新婚生活」#影を慕いて

NHK連続テレビ小説「エール」第7週33話(5/13放送)に登場した曲です。【木枯がレコードデビュー】

影を慕いて(古賀政男 作詞曲)


 第33話でRADWIMPS野田洋次郎さんが演じる木枯正人が、カフェーで女給たちに囲まれながら、弾き語りした「影を慕いて」。                                     後に国民栄誉賞まで受賞する作曲家・古賀政男の代表作です。


 最初に発表されたのは1929年(昭和4年)。古賀政男は前年に明治大学を卒業、明大マンドリン倶楽部の指導者として迎えられた明治大学マンドリン倶楽部の定期演奏会でギター合奏曲として演奏されました。                          藤山一郎の歌唱で有名な楽曲ですが、一番最初にレコーディングした歌手は佐藤千夜子です。    

佐藤千夜子は「東京行進曲」「波浮の港」で知られ、ラジオ放送開始時期とレコードデビューが重なります。流行歌手の先駆け、と言って良い存在でしょう。連続テレビ小説でも、1977年の『いちばん星』ヒロインとして取り上げられています。連続テレビ小説においても今回のモデル・古関裕而の大先輩ですね。                              佐藤千夜子が古賀の弾く「影を慕いて」初演を見て、レコード化を薦めたというエピソードがあります。     

当初日本では珍しいワルツ形式のギター演奏のみだった楽曲に、古賀政男本人が書いた歌詞を加えて音源化されたのは1931年。ただし当時はシングル「日本橋から」のB面収録曲であった上に、ヒットもしませんでした。翌年藤山一郎歌唱のレコード化で大ヒット、広く世に知られることになりました。


戦後も多くの歌手にカバーされ、とりわけ1968年に発売された森進一のアルバム『影を慕いて』は大きな話題となります。1982年、当時では珍しい過去曲中心の選曲が行われた第33回NHK紅白歌合戦では、森進一が「影を慕いて」で大トリを務めました。

この曲が誕生した昭和初期は、金融恐慌で空前の不景気でした。     その中で古賀政男は突発的に自殺を図ります。その時の人生への不安と絶望と、谷底から見た蔵王の山に消えかかる鮮やかな夕焼けから浮かんだ楽曲には、歌詞だけなくメロディーにも痛切な哀愁・苦しみを感じられます。  

令和が始まった現在もまた新型コロナウイルスの蔓延により、世相は決して明るくありません。時代はまるで違いますが、「影を慕いて」が発表されてから約90年、絶望と不安を感じる人は少なくありません。いつの世もこの唄は、そうした人々の苦悩に寄り添い歌い継がれてきたのかもしれません。

(文:ミュージックソムリエ:柏井要一)


NHK連続テレビ小説「エール」                  (NHK総合月〜金 朝8:00〜8:15、12:45〜13:00)土曜日は1週間を振り返ります。その他NHK BSプレミアム、NHK BS4Kでもオンエア中です。    
*放送予定 3月30日〜9月26日
またNHKオンデマンドでも見逃し放送をご覧になることができます。

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