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第8週 「紺碧の空」#丘を越えて

NHK連続テレビ小説「エール」第8週36話(5/18放送)に登場した曲です。【早稲田大学応援歌の依頼】

島田 芳文 作詞 古賀政男 作曲 丘を越えて

 1931年12月に日本コロムビアから発売された「丘を越えて」。
先日ドラマ「エール」の中で「影を慕いて」が野田洋次郎さん演じる木枯正人によって弾き語りされましたが、「丘を越えて」も彼、木枯正人が作曲。
木枯正人、モデルになっているのは作曲家の古賀政男さんですね。劇中でもそのままの曲名で使われています。

劇中、「丘を越えて」のレコーディングでディレクターの廿日市も”これは売れるよ!”と息巻いていましたね。その場にいた早稲田大学応援歌の依頼を受けながらも全く曲が書けずにいる古山裕一は肩身の狭い思いです。

「丘を越えて」曲調は「影を慕いて」とは大きく異なる、軽快な内容です。歌詞を書いたのは島田芳文さん、ドラマには出てこないようですが、歌詞は軽井沢の浅間牧場の風景を描いたというエピソードがあるようです。

 柿澤勇人さんが演じる山藤太郎の歌唱がSNSでもおおいに話題になりました。
モデルになっているのは勿論国民栄誉賞受賞歌手・藤山一郎さんです。
東京音楽学校で声楽を学ぶ藤山一郎、本名、増永丈夫は、生活のために多くの流行歌を吹き込みました。
「丘を越えて」は、まさにその代表とも言える作品です。
同時期の大ヒット曲は他に「酒は涙か溜息か」、「影を慕いて」もその一つでした。

 レコードがヒットしたことで困ったのは、当の増永丈夫自身でした。
校外演奏は学校で禁止されていましたが、彼は収入のため”藤山一郎”と名を変えてレコーディングしていたのです。
やがて投書が届いて学校に知れ渡り、あわや退学という騒ぎになるも、周囲の取りなしによって何とか停学処分までに留まりました。その後は学業に専念して首席で卒業、その後ビクターに入社して再び数多くのヒット曲を生み出すことになります。

大ヒットした作品のカバーは沢山ありますが、藤山一郎さんのオリジナルバージョンでは1984年にトヨタ自動車「スターレット」のTV-CMで、またカバーでは1976年には矢野顕子さんのアルバム『JAPANESE GIRL』に収録、2008年に映画『丘を越えて』主題歌でつじあやのさんが歌唱、また2015年にはトヨタ自動車のカローラのシリーズで、木村拓哉、OKAMOTO'S、PUFFY、清水翔太、矢野顕子、細野晴臣、加藤ミリヤ、石川さゆり、マツコ・デラックスがカバーしています。(敬称略)

ドラマのこれからの回では古山裕一の曲を山藤太郎が歌う場面が出てくるでしょうか。楽しみです。

(文:ミュージックソムリエ 柏井要一 )





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