【ある障がい者の経験談】他人と向き合う覚悟

 俺の25年の人生経験で、確信したことがある。障がい者に関わろうとする人間の9割が4パターンのいずれかに当てはまるということだ。
 ひとつは、仕事。就労支援施設のスタッフ、特別支援学校の先生、あとは、相談員さんや医者などだ。「仕事じゃなければ障がい者の相手なんかしたくない」と、俺の前で平然と言ってのけるような人も多くいた。
 2つ目は、同情や憐れみ。こういうタイプの人間は、二言目には「こんなふうに産まれちゃってかわいそうに」とか言い出す。言っておくが俺は、自分のことをかわいそうだなんて思ったことはない。大事な親友だっているし。
 3つ目は、マウント。これは学生時代、同級生(障がい者同士)の間でさえあったことだ。「俺は歩けるから車椅子のお前より偉いんだ」とか普通に言い出す。学校であれば「知的の言うことだし」と軽く流せるが、施設に通い出しても「障がい者の分際で健常者に逆らうのか」という言葉が日常的に飛び交っていた。小学生の頃から先生に「社会に出たら人間としては扱ってもらえないと思え」とよく言われた。「まさかねww」と思っていたら、現実だった。
 4つ目は、お金目当て。障がい者に対する理解は一向に進まないが、障がい者が年金をもらっているという事実だけは確実に知れ渡っている。学校ではいろんな先生から「ドラゴンくんは絶対結婚詐欺に引っかかるから気をつけた方がいい」と20回くらい言われた。当時は「俺がそんなのに引っかかるわけないだろ!」という怒りもあったが、今の女性慣れしていない自分を冷静に分析してみると、だんだん怖くなってきた。

 ……とまあ、こんなに悲観的なことばかり並べて何を言いたいかというと、そんな世の中だから「人と関わることに勇気がいる」ということだ。上記のような「個人」を見ようとしない人たちは、向こうから関わってくる傾向にある。そういう人間とは付き合いはしても、友だちにはなれない。しかしそれでも、友人が1人もいない人生は多分辛い。友だちを作りたいと思うこともあるだろう。そういう時、友好的な人間関係を築くためにはこちらからアプローチするのが大事だと思う。
 しかし、ここで問題がある。俺は運よく、優しくて俺のこともよく分かってくれるNさんという親友を得たが、こちらからのアプローチが絶対に成功する保証はない。むしろ前段落に示したような、ストレスしかたまらない連中を引き当ててしまう場合がほとんどだ。それでも、他人との関係を諦めなければ、100回に1回くらいは、俺にとってのNさんのような人間に出会うことができるだろう。
 ただし、こういう考え方を持続させるには相当の覚悟がいる。自分から誰かにアプローチをかける度、「障がい者はお呼びじゃない」という態度を取られる恐れがあるからだ。俺も偉そうなことを言ってはいるが、Xで「フォローさせてほしいです!」というメッセージを送った途端にブロックされた経験が20回ほどある。原因は何か分からないが、俺が障がい者であることは全く無関係ではないだろうと思う。
 最初の数回は「いきなりブロックするような非常識なやつ、こっちから願い下げだ」と思うこともできる。が、それが7、8回ほど続くともう心が折れてしまう。これは悪いことではないが、折れっぱなしはよくない。
 人間は、誰か理解者がいなければ生きて生きない。完全に1人きりで生きている人間なんていないのだ。だからこそどんなに傷ついても他人との関係を諦めず、傷つく勇気と覚悟を持つことが大事だと思う。
 ……と、読者のみなさんへのメッセージを気取っているが、実はこれは今自分自身に言い聞かせたいことでもある。これをもって今月最後の記事更新とさせていただく。読んでくださったみなさん、ありがとうございました。来月も応援よろしくお願いします!

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