【ドラゴンのエッセイ】フラッシュバック

 いろいろあってレギュラーエッセイの更新は久しぶりだ。実は最近ネガティブになりがちで少し困っている。
 きっかけはしっかり分かっている。元日に発生した能登半島地震である。こう書くと「東日本大震災のトラウマね」と思われるかもしれないが、違う。もう少しあとで植え付けられたものだ。今回はその件について書くことで、自分をリセットしようと思う。ぜひお付き合いください。

 特別支援学校高等部を卒業して最初に入った施設での話だ。そこでは毎日のように誰か(スタッフだったり利用者だったりする)の暴言や怒号が飛び交っていた。俺は障がいの都合上、いきなりの音や極端に大きい音が苦手だ。一瞬で思考が停止してしまい、復活するまでに何秒か要する。
 俺が施設に入って3か月ほどした頃だっただろうか。ある利用者(精神障がいの方)のブチギレのターゲットが俺になってしまったことがあった。「ターゲット」と表現したのは、俺に全く非がなかったからだ。俺はただ彼に「おはようございます」と挨拶をしただけだった。すると「話しかけてんじゃねーよ!」とキレられた。
 当然俺としては、なぜキレられているのか全く分からない。とりあえず謝ってはみるものの「謝ればいいと思ってんだろ!」という感じで怒りはエスカレートする一方だった。これはもうどうしようもないと思ったので、スタッフに助けを求めた。
 後日聞いたことだが問題の利用者は、怒ると誰の話にも耳をかさず、ともすれば暴力を振るう可能性すらあるような人物だったらしい。俺が「謝る」という姿勢を崩さなかったため、下手にスタッフが出ていくより穏便に済むだろうという判断をしたという。
 結果的に暴力沙汰は避けることができた。したがって誰も怪我はなかったが、午前中の作業は誰も全く進行できなかった。その間俺はずっと彼に怒鳴られ続けていた。
 こういった経験もあって施設を辞める運びになったのだが、今でも大きい声を聞くとあの時の恐怖がフラッシュバックしてしまうことがある。

 ではなぜ、今回の地震でフラッシュバックが起こったのか?
 俺の住んでいる地域では揺れはさほど大きくなかった。津波被害も全くない。フラッシュバックの原因は、テレビである。
 地震速報が出て、それまでやっていた番組が中断した。あっという間に津波警報が出て、臨時ニュースでもそのことを盛んに報道した。
 こういう時、一番正確で早いのはNHKの番組である。だからチャンネルを合わせた。すると女性のアナウンサーが「テレビを見ている場合ではありません! 今すぐ避難!」と怒鳴っていた。それはもう凄まじい勢いで、それを聞いた俺はたちまちあの頃の怒号が飛び交う毎日を思い出してしまったというわけだ。
 しかもニュースはその後も続き、俺の意思に拘らず絶えず災害の悲惨な状況を見続けなければいけなかった。その上翌日の飛行機事故である。もちろん必要な報道であることは分かる。だがどこのチャンネルでも話題は地震か飛行機事故で、DVDを見るような気分にもなれず逃げ場がなかった。さらに一旦沈んでしまったメンタルはなかなか元には戻らず、今でも少し引きずっている。

 一旦フラッシュバックが起こると、ネガティブなことが次々に思い出され、負の無限ループに入ってしまう。ここ数週間はまさにその状態だ。誰にも言えないし、かと言って物などに苛立ちをぶつけるわけにもいかない。結局溜めこんでしまって、どん底まで落ちてしまう。
 こういう時には友人と話したりすればいいのだが、俺の場合落ち込んでいる時は誰彼構わず傷つけてしまうような気がしてコミュニケーションに積極的になれない。友人に頼りたいけれど頼れない。だからnoteでまず発散するようになった。ここで自分のストレスを一度言葉にすれば、誰かと話す時にも素直になれるような気がする。大きなストレスがかかった時のルーティーンだ。
 こういう文章は、読んでいる人の気分を上げるものではない。負の感情に飲み込まれてしまう人もいるだろう。しかしこの行為は俺にとって、重要なデトックス作業なのだ。なのでフォロワーのみなさんには、温かい目で見守ってほしいと思います。
 次回のエッセイはもう少しポジティブなエピソードをお届けできたらいいな。

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