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(音楽話)87: Paula Cole “I Don’t Want to Wait” (1997)

【あんまりだ】

Paula Cole “I Don’t Want to Wait” (1997)

Paula Cole。1968年米国マサチューセッツ州ロックポート生まれ。ボストンのバークリー音大でジャズ声楽とインプロヴィゼーションを学び、卒業と共にプロ契約。すぐにPeter Gabrielのライヴ前座を担い、94年のアルバム・デビュー後もPeterのライヴをサポートし、”Don’t Give Up” (PeterとKate Bushの有名なデュエット曲)をKateの代わりに歌ったりもした、いわゆるPeterお気に入りのシンガーでした。そして96年に2ndアルバム「This Fire」をリリースすると、シングル”I Don’t Want to Wait”と共にヒット。その後ヒット曲にはあまり恵まれないものの、地道にアルバム制作とライヴ活動を続けています。

日本ではNicolas CageとMeg Ryan主演映画「City of Angels/シティ・オブ・エンジェル」(1998)の予告CMで流れて有名になりましたが、この曲はティーン向け米国学園TVドラマシリーズ「Dawson's Creek/ドーソンズ・クリーク」(1998-2003)の初代主題歌として米国人には超有名
海外学園ドラマといえば「Beverly Hills, 90210/ビバリーヒルズ高校白書・青春白書」ですが、シーズンが進むに連れて登場人物たちが社会人になるとティーンには刺さらず、その人気は下火になっていきました。そこに登場した「Dawson’s Creek」は、米国の田舎街の生活をベースに、等身大のティーンの恋愛や生活を描いたことで大人気となり、再度の学園ドラマブームを生んだとされています(「The O.C.」「Gossip Girl/ゴシップガール」など)。ちなみに日本ではなぜかほとんど放映されず、動画配信もありません。残念。

この映像はリリース翌年、米国の某TVショーに出演した際のもの。アコースティックなバンド・サウンドで、Paulaはピアノを弾きながらしっかり歌っています。エコーがほぼないミックスなので本人の歌唱力がモロに分かるとてもリスキーなパフォーマンスですが、地声とファルセットの混ぜ方、息継ぎ、強弱などが伝わってきてます。歌巧いですねぇ。

興味深いのは歌詞で、実はかなり重め。家族を残して戦争に駆り出された男が帰還するも、戦争の強烈で凄惨な体験が彼を苦しめ続ける。それを優しくそっと見守る奥さんの心の叫びーーー「このまま人生終わっちゃうなんてあんまりよ」。いわゆる反戦歌。これがなぜ学園ドラマの主題歌に…?

あっという間に4月も終わり。コロナ禍の出口は見えず混乱ばかりが目立つ日々。「このまま人生終わっちゃうなんてあんまりだ」と言いたくなりますが、今は耐え凌ぐしか…ないのかしら?世の中一喜一憂し過ぎじゃない?

良い週末、GWを。

+++++++++

[#]
とにかく 朝日を受け止めて
祈ってちょうだい
生き続けていれば
互いの平穏が きっとあるわ

彼女には子供が2人 ひとりは6ヶ月、ひとりは3歳
44年 戦争の頃の話
電話が鳴る度 心臓の鼓動が早まった
今に神様から 連絡があるんじゃないかって
いつになったら 息子は父親に会えるの?

[+]
まっぴらよ このまま人生終わりなんて
今すぐに知りたいの どうなるかって
まっぴらよ このまま人生終わりだなんて
答えはイエスなの?それともそれって…?

…え?なに?

彼は帰ってきた ずぶ濡れになって
砲弾の破片が 身体に埋まったまま
彼が見た戦争は 彼の中でまだ生きている
途轍もなく困難 穏やかに暮らすなんて
それでも時は過ぎ 彼には孫娘ができたというのに

[+repeat]

私を見てるのね 部屋の向こうから
苦悩に満ちた 顔してるわきっと
信じて わかるわその気持ち
それはあなたを追い込む 怒りの瀬戸際へと

だから深呼吸して もうちょっとだけ深く
私たちが手にしてるのは かけがえのない現在
あなたになってほしくないの あなたの父親
その父親 またその父親のようには…

[#repeat]

[+repeatx2]

…え?なに?

[#repeat]

(Paula Cole “I Don’t Want to Wait” 意訳)

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