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(音楽話)09: 美空ひばり “民謡メドレー(斎太郎節〜久保田節〜佐渡おけさ〜相馬盆唄)” (1970)

【奇跡、驚異、雄大】

美空ひばり “民謡メドレー(斎太郎節〜久保田節〜佐渡おけさ〜相馬盆唄)” (1970)
https://www.youtube.com/watch?v=33hLon-_iKM

美空ひばり。この歌唱を聴いて「化け物…!」と思わない方がどうかしてる。

不世出の歌手・美空ひばりーーーと散々、皆さんも耳にしたことがあると思います。比較的若い世代の方は”愛燦燦”や”川の流れのように”でご存知でしょうし、”リンゴ追分””悲しき口笛””東京キッド””真っ赤な太陽”なども聞いたことがあるかもしれません。もう少しご年配の方は、”柔””悲しい酒””湊町十三番地””人生一路”などに思い出があるでしょうし、なんでも歌をこなす彼女の才能もご存知と思います。
8歳から歌手活動を始めてやがて劇場(横浜国際劇場)専属歌手となり、昭和24年(1949年)にレコード・デビュー。あっという間に当代随一の歌手に。彼女の前にジャンルなど関係なく、常に「歌謡界の女王」として君臨し続けた「御嬢」。さらに歌は勿論、150本以上の映画にも出演した銀幕俳優でもあった…彼女についてはあまりに有名なので、このくらいにしておきます。

この映像は昭和45年(1970年)、ブラジル公演の一部。民謡4曲のメドレーです。ひばり全盛期(当時33歳)といっていいでしょう。

0:00〜 斎太郎節(宮城県)
1:48〜 久保田節(秋田県)←必見
3:28〜 佐渡おけさ(新潟県)
5:18〜 相馬盆唄(福島県)

“斎太郎節”は聴いたことがある方も多いのでは?御嬢は比較的オーソドックスに歌ってますが、バックバンドの演奏力が素晴らしい。大したモニター・システムなんかない時代、指揮者がいるとはいえ一糸乱れぬリズム感。昔の演奏を聴けば聴くほど、その能力の異常な高さに毎回驚かされます。
この動画の中で一番の衝撃、”久保田節”。楽曲自体が実にモダン。これは「新民謡」と呼ばれた、戦後作られた民謡です。どっからどう切っても美空節全開。転がるような発声、曲の合間の「イェエイ!」という掛け声、腰振りダンスの絶好調ぶり、「エェェエェ〜〜〜〜〜」のビブラートとピッチの正確さ…鳥肌立ちませんか?
“佐渡おけさ”アレンジの斬新さも驚きます。イントロだけだと「え?民謡?」と思いますが、歌が始まると途端に民謡。しかし1番が斬新に終わる。そして2番へ(御嬢が一瞬「ん??」という顔してますが笑)。非常に攻めたアレンジは、この頃の日本の音楽が様々なジャンルの音を積極的に取り入れていたんだなと思います。
最後の”相馬盆唄”なんかもうロックンロールです。「あぁコーリャコリャ!」がたまらない。ツイストもキレキレ。これだけ歌えれば気持ちイイに決まってる、満面の笑顔で軽く歌ってます。

美空ひばりは、音楽学校に通ったわけでもないし誰かの門下生だったわけでもない。つまりほぼ100%オリジナル、才能だけで歌っていた。そして歌謡曲も演歌も民謡もジャズもスタンダードもロックンロールも何でも歌えてしまったし、そのどれもクオリティが異常に高かった。これを「化け物」と言わずして何と言いますか?勿論陰ながら努力していたとは思います。しかし楽曲によって声色も歌唱方法も、容姿も表情も全て変えるなど、努力だけでどうにかなるものではないはずです。彼女こそ天才、いや、悪魔かもしれない。

「美空ひばり」という世界観、ジャンルとしか言い様がない音楽。こういうシンガーを唯一無二の存在を「アーティスト」と呼ぶのだと、私は思います。

「オブリガーダ」。

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