見出し画像

(音楽話)91: Swing Out Sister “You on My Mind” (2013?)

【毒と薬】

Swing Out Sister “You on My Mind” (2013?)

日本でも非常にファンの多いグループ、Swing Out Sister。80−90年代のCMやドラマ、そこかしこで流れてましたよね。ヴォーカルCorinne Dreweryの低くて深くて温かい歌声と、ポップでノスタルジックで美しいメロディ・サウンドで数々のヒット曲を生み出しました。

当初はもっとシティポップ寄りというか、かなりエレピとリズム重視なサウンド。そこで大ヒットしたのが”Breakout”(1986)。この路線で立て続けにヒットを出すも、グループの方向性はより普遍的な音楽、具体的にはBurt Bacharachのようなスタンダードでアナログなサウンドを志向していきます。その方向性の違いで、アルバム制作中にドラムスが抜け彼らは3人→2人組に。その最中のアルバムが2nd「Kaleidoscope World」(1989)と、今回の”You on My Mind”になります。

その後は、その時々のトレンドを最小限取り入れつつもスタンダード・サウンドなアプローチは変えずに活動を続け、”Am I the Same Girl?”(’92)、”La La (Means I Love You)”(’94)、”Now You’re not Here”(’96)など、90年代も売れ続けました。特に日本では本国・英国以上に人気で、来日公演やプロモーション、ドラマ・タイアップなど、がっつりやってました。そして彼ら、今でもマイペースに活動していて、来日公演もしばしば。モデルのようにスラッとしたCorinneの風貌と声、楽曲の要を守り続けるAndy Connellのキーボードは健在。息の長いグループです。

You on My Mind”は89年当時少し売れた程度。PVが小洒落ていて、WikiによるとSteve McQueen主演映画「The Thomas Crown Affair/華麗なる賭け」(1968)のオマージュなんだそう。
レイドバックするという手法は、高度成長期の末期だった80年代末頃〜90年代前半に一部で流行りました。最新トレンド云々に疲れ、刺激を感じなくなった人々にとって、過去のサウンドは意外にも新鮮だったー「レトロブーム」ってやつです。そしてそれは今現在またブーム。「昭和レトロ」「平成レトロ」とかいって。

人間て、時々、いや、常に、過去に立ち返りたくなる生き物。

そんな先駆けな曲。この映像はどうやら2013年頃のライヴのようですが、ビッグバンド編成での”You on My Mind”です。ブラス・セクションの音像の拡がり方、リズム・セクションの心地良さ、パーカッションの素晴らしい味付けなど、生のサウンドを存分に楽しめます。コーラスのお姉様の歌いっぷりも威風堂々。これは…ライヴ観たい!!

そして歌詞は…強烈な未練、諦められない愛。偏執狂になりかけてますが、サウンドがそこを軽くしてくれてます。この毒(歌詞)にこの薬(サウンド)は確信犯、実に英国らしい。爽快な苦味、心地良い未練とでも言いましょうか…思わず微笑んでしまう素敵な曲。ぜひチルアウト的に味わってくださいませ。

+++++++++
じきにあなたを忘れるよって 友達は言うけれど
あなたのことで頭いっぱい 私は憂鬱になるの
時は忘れたみたい でも私はまだできてない
何故なんて聞くのは野暮
涙が乾かないうちはね

[+]
他の誰でもない あなたしかいないのよ
見つかるはずのない パーフェクトな結末を探してる
もしこの時を 上手くやり過ごせたら
一緒にこの先の夢を 育むことだってできたのに
私たちの永遠の世界で

あなたがいなくなって 何年も経ったわ
私の綻んだ気持ち 待ちくたびれちゃった
あなた以外とじゃ私 やってけそうにない
何故なんて聞くのは野暮よ
あなたとヨリを戻さないうちはね

[+repeat]
花は咲くものよ
私たちが育んだ種からきっと

そんな時を待ってるのよ
私の心はいつだって…

(Swing Out Sister “You on My Mind” 意訳)

(紹介する全ての音楽およびその画像・動画の著作権・肖像権等は、各権利所有者に帰属いたします。本note掲載内容はあくまで個人の楽しむ範囲のものであって、それらの権利を侵害することを意図していません)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?