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(ライヴ体験記)03: saya@JZ Brat Sound of Tokyo (Mar. 8 2021)

【桜と炎】

saya 2021 JZ Bratライブ「花篝」ハナカガリ〜千金の時に

saya (Vo) 塩入俊哉 (Pf)

***Set List***
1 夜と時の向こう*
2 蘇州夜曲
3 浜辺の歌
4 悲しくてやりきれない
5 君をのせて
6 Fly Like an Angel*
7 Nokturn cis-moll Lento con gran espressione op. posth./夜想曲第20番+
8 Invierno Porteño/ブエノスアイレスの冬+

9 黒の船唄
10 メランコリア*
11 Padam…Padam…
12 Miracle 〜祝祭の日々〜*
13 約束*

14 僕は行く〜星の王子さまより

(*sayaオリジナル +塩入ソロ)

※1-8までのみ鑑賞。しっかりご覧になった方が素晴らしいレビューを書いているので、ご興味ある方はそちらを是非↓↓

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コロナ禍や自分を取り巻く状況や精神状態もあって、鬱々とした日々は私の心の奥底を抉る。音楽である程度救われてはいるが、辛く、苦しく、切ないという感情が支配的。このままでは破綻する、何か変えなければーそんな思いで、私は渋谷に降り立った。
久しぶりの渋谷は、もう以前の「渋谷」では無かった。駅の南口を降りて目に飛び込んできた綺麗過ぎる歩道橋と、その南側に広がる広大な空間に建設現場。東側には巨大ビルが複数聳え立っている…そっち方面の空に突き刺さるビルは、以前なら渋谷クロスタワーくらいだったのに。多くの人が行き交う中、無意識に溜息をついた。何処だよここは…私の知る「渋谷」じゃない。ここは「SHIBUYA/シブヤ」。街の移り変わりは当然のことだけど、自分の知っている「渋谷」が確実に消えていく現場に居合わせて、さらに切なくなった。

自分が世界から完全に取り残されているように感じていた。

sayaのライヴは、そんな私の落ち込んだ心持ちを優しく引き上げてくれた。前半しか観ることができなかったが、それでも十分に、このライヴは私を救ってくれた。

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オープニングは未リリース曲”夜と時の向こう”(表記合ってる?)。いきなり胸を締め付けてきた。音数少ないピアノの伴奏と、sayaの透明に広がる声のみ。心地良く沁みてくる音に目を閉じると、この胸の締め付けがスッと解けていく。

蘇州夜曲”は穏やかに漂う名曲で、幾多のカヴァーを生んできた。魅力的でロマンある歌詞を、丁寧にゆっくりと、優しい歌声が会場を響いていく。私事で恐縮だがこの歌は母の十八番で、数え切れないほど聴かされた思い出が蘇った笑

何度か聴いたことがあったが、今回違う響きに感じて驚いたのが”浜辺の歌”。スケールが大きく感じたのだ。歌い方や声量の違いは判別し難いが、sayaの心に映る情景と感情が、これまでと違ったのではないだろうか。

sayaのYouTubeチャンネルで既に配信している“悲しくてやりきれない”。とてもシンプルな楽曲なので、ピアノも最小限の音に終始。「やりきれない」聴く者の今の気持ちを代弁する、sayaの伸びていく歌声は水面の光に似る。

宮崎映画が生んだ名曲のひとつ“君をのせて”は、感覚的にsayaにとても似合う。ファンタジーの世界に浮かぶ地平を見据えた目線や動きが、歌の世界をより確かに伝えてくる。塩入のピアノの安定さが実はとてもポイント。

今回私が観た中でのハイライトは”Fly Like an Angel”だった。全編ほぼ地声で歌うことで歌詞の噛み締め度を強くするオリジナル曲で、実際歌うのは大変難しい。それをsayaは、素晴らしく熱唱してみせた。
失礼を承知の上で直言するが、声は揺れたし掠れもした。音の伸びもギリギリだった。しかし、彼女の熱量・感情吐露の加減が圧倒的で、歌世界に無条件で聴き入るしかないほどの空間を生み出していた。これはライヴでしか体験できない、動画では伝わってこない空気の味。拍手。

(参考: 2012年11月のライヴより。しかし今回のライヴではこの比では全くなかったことを明言しておく)

ここから塩入タイム。今回確信したが、塩入のようにピアノで歌うことができてしまう人は、Fryderyk Franciszek Chopinの死後に発見された”夜想曲第20番”のような曲を、きっと愛してやまない。他のピアニストの演奏を色々聴いてみたら、塩入のそれはゆっくりに感じた。より感情的に、より歌に近い抑揚と音の詰め方。そんな感じがしたが、本人的にはどうだろうか。

バケモノ!と思った”ブエノスアイレスの冬”。アルゼンチンのAstor Piazzolla(今年生誕100周年)というバンドネオン奏者/作曲家による「ブエノスアイレスの四季」シリーズ。クラシックのようであり、ジャズのようであり、ラテンの匂いもして…すげぇ具だくさんだなぁと思って聴いていたが、途中からの激情ぶりに思わず引く。塩入のせいで空気が凍てつく…怖い。全面真っ白な冬ではなく、枯れた草原と少しの雪と灰色の空。そして最後に少しだけ曲調に明るい兆しが…なるほど、この流れで「春」にいくのか…。

ここで私はタイムアップ。強烈に後ろ髪を引かれる思いで会場をあとにした。全編ご覧になった方のレビューによると、”黒の舟唄”(野坂昭如!)という飛び道具的チョイス、東日本大震災に想いを寄せた”約束”(sayaオリジナル)、sayaにぜひ歌い続けてほしい曲だと個人的に思っている”僕は行く”など、後半もバラエティに富んだセトリだったようだ(”メランコリア”…ぐぉぉ聴きたかった←sayaオリジナルの素敵なヨーロピアン曲)。

帰り道、ライヴ前の心の綻びは、柔らかく優しく包まれていた。久々に生音・生声に触れて、少し血色を取り戻したかのようだった。桜のように艶やかに咲き始めたsayaさん、炎のように空間を暖めた塩入さん、ありがとう。私はまた、皆さんに少し救われました。この厳しい世界にあっても、ライヴ=LIVEという生命を解いてくれて、本当に感謝。2021年初ライヴ、濃密に堪能しました。

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