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(音楽話)26: Dr. John “Locked Down” (2012)

【クセ者】

Dr. John “Locked Down” (2012)

Dr. Johnは1941年、米国ルイジアナ州ニューオリンズ生まれ。元々はギタリストでしたが、61年にイザコザに巻き込まれ、友人を庇って左手を銃で撃たれ薬指が不自由になりその道を断念。キーボディストの道を歩み始めます。
ニューオリンズに伝わる伝統音楽に光を当てた「Dr. John’s Gumbo」(1972)、ダミ声な彼なりの興味深いAOR「City Lights」(1978)、渋いゲストたちを迎えて全編カヴァー曲に挑戦した「In a Sentimental Mood」(1989)、当時の売れっ子たちを多数招聘して英国寄りなサウンド・メイクを施した「Anutha Zone」(1998)など、数々の名作アルバムがあります。
また、非常に多くの客演でも有名。特にThe Bandの伝説的解散ライヴ「The Last Waltz」(1976)への出演、The Rolling Stones70年代の名作アルバム「Exile on Main St./メイン・ストリートのならず者」(1972)への参加、Ringo Starrが組んだRingo Starr & His All Starr Bandへの参加(1989)、などなど。数多のシンガー、ミュージシャン、バンドの楽曲にゲスト参加し、新旧問わず交友関係が広かったことも彼の人となりを表しているかもしれません。
残念ながら2019年心臓発作で逝去。77歳。当時米国ではかなり大きなニュースとして取り上げられ、その喪失を悼みました。

彼の音楽は米国南部をルーツとしたブルース、カントリー、ネイティヴ・アメリカンなもの。だから音に込められたスモーキー加減というか、やさぐれ感というか、埃っぽい濃密な音空間が特徴。そしてあの、非常に特徴的なダミ声。そう、クセがヒドイ。だから好き・嫌いかなり分かれるかもしれません。私は…好きですねぇ。これだけで酒が呑める笑

この曲は2012年の同名アルバム「Locked Down」収録(→通算6度目のグラミー受賞(最優秀ブルース・アルバム))。ブルージーで禍々しい。死語ですが「ワルな」サウンド笑 イントロの「ホワワワァ〜」な音は恐らくノコギリを弛ませて叩いているかと。やはりこのジイちゃん、クセがヒドイ(2回目)。単なるブルースではなく、そこには現代のダブ・サウンドやファンク要素もあって、70歳くらいのジイちゃんのアグレッシヴさがビジビシ伝わってきます。
(サウンド・メイクしたのはThe Black KeysのDan Auerbach。最高のブルージーな素材を前にさぞかし力入ったでしょうねぇ…)

彼の歌詞は非常に難解なので日本語訳もほぼ無意味かもしれませんが、年齢を積み重ねてきたからこそ歌える内容に思えますし、当時の世相を憂いて「ロックダウンだ!」と言い放つ様はブルースでありロックンロールだなぁと痺れたりします。

クセ者の音楽は2020年、先が至極不透明な現代をまさに言い当ててます。色々考えさせられます…。

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長年無茶して生きてきた
正義の仕組みとやらが 俺をぶっ飛ばすんだ
未来は不渡手形みたいに 伸びきっちまった
いちいちネチネチしなさんな
一発逆転を狙った そのディール
お前の計画を 振り出しに戻すかもしれんぞ

お前がよくやるみたいに 俺に指を差すんじゃねえよ
そうやる奴らの何人かが お前に指を差し返すってもんさ
ロックダウンさ、こりゃ厳重監禁だよ!

随分遠くまできたし 嵐の中歩き通してきた
延々と続くサバイバルは 俺を強くしてくれたよ
昔ながらの鏡で見る俺の顔は
モヤがかかって 一向に見えやしないがね
食堂の配給みたいに 俺を十分手厚く扱ってくれよ
数に対してやり過ぎなんだよ 全てが

お前がよくやるみたいに 俺に指を差すんじゃねえよ
そうやる奴らの何人かが お前に指を差し返すってもんさ
ロックダウンさ、こりゃ厳重監禁だよ!

皆のことが なんだかよく分からない
死の代償なんて 安っぽくなっちまったから
隙を見ては皆 奪って盗んでだらけ
迷子みたいに 目立ってるんだよ
まるで追い詰められた ネズミのよう
一体お前がエラそうに 何を知ってるって言うんだ?

お前がよくやるみたいに 俺に指を差すんじゃねえよ
そうやる奴らの何人かが お前に指を差し返すってもんさ
ロックダウンさ、こりゃ厳重監禁だよ!

(Dr. John “Locked Down” 意訳)

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