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【アーカイヴ】第132回/「田中の新著をよろしくお願い致します」と厚かましく連呼する9月[田中伊佐資]

 ●9月×日/いつの頃からか、テレビは新番組の宣伝が過剰になっている気がする。新しいドラマが始まるタイミングで主演の俳優たちが朝から晩までバラエティや情報番組などへ唐突に出てきたりすることが少なくない。あれをさかんにやられると、ドラマがスタートする前から食傷気味になり、かえって逆効果を招くのではないか。 

 いや、そんなことは、おそらく関係者は百も承知なのだろう。しつこくやって多少デメリットがあろうとも、そこで初めて番組を知る人がいるメリットのほうが大きい。多分そう踏んでいるのだ。

「オーディオそしてレコード ずるずるベッタリ、その物欲記」
(10月19日、音楽之友社より発売。全212ページ2376円)
※掲載当時の情報です。

 えーそこで「オーディオそしてレコード ずるずるベッタリ、その物欲記」(10月19日、音楽之友社より発売。2376円)のことです。3か月連続で表紙を載せる「本宣」をお許しください。テレビの件は、その前振りでした。それと、本の制作に掛かりっきりだったためオーディオは休止状態、いつもここに載せているような小ネタがないわけです。

 ステレオ誌で連載している「ヴィニジャン~アナログの壺」を1冊にまとめただけなので、自分でもなんでそんなに時間を食ったのかと思うのだが、原稿の書き換えが趣味みたいなもので(これは編集者時代に人の原稿に手を入れるクセがついたため。つまり自分の元原稿が気に入らない)、そのことで手間取った。

 それと雑誌では1回が4ページ、今回は6ページに増やしたことも時間がかかった要因だ。写真をたくさん載せたいためだが、よくよく探してみても、たいしていいカットがない。98%近くが、本文で登場する編集担当シュンスケとぼくのアマ写真。でも買ってくれた人はカメラマンがプロだろうとアマだろうと関係ない。版元にしてみれば、写真がイマイチなので安くしときますというわけにはいかない。写真をどう繕ってレイアウトするかに腐心した。

 まあでも、言い訳をしておきますが、オーディオ知らないプロカメラマンの写真と、オーディオ知っている素人写真を比べると、後者のほうが面白かったりしますけどね。

 掲載写真はざっと数えたら400枚を超えている。ぼくは普段、本を読まないので(本を最後まで読み通すのは4年に1冊くらい)、写真が多くないと、みんな途中でほっぽるだろうなあと悲観している。ヘタなりの写真で本を引っ張ってもらうしかない気持ちが強い。

 でも表紙はさすがにプロカメラマンだ。撮影は高橋慎一さん。素人と比較するのはとても失礼だが、ぼくらとクォリティがまるっきり違う。

 表紙の絵柄は「オーディオっぽさ」が希薄なためか、さほどメカに詳しくない人からリアクションがあった。本コラムを担当しているミュージックバードの関根さんからも「場所はどこですか」とか。

 ぼくが手に持っている『ニーナ・シモン・シングス・エリントン』はさぞかし愛聴盤なんだろうなあという情景だが、犬がしっぽを下げるほど、顔のインパクトが強力で、実は内容よりジャケットの絵柄優先でその場で選んだ。

 ちなみにこのレコードは、音ミゾのディレクター岩崎さんからプレゼントされたものだ。ほかにもニーナは何枚かいただいた。

▲稀少なプレーヤーやレコードなどが満載▼

 右端の調理ストーブの上にはピザが載っている。こりゃなんかあったほうがいいねと撮影の数分前にあわててスーパーへ行って出来合いを買ってきた。本当ならピザはストーブのとびらを開けてなかで焼くべきものだけど、天板に肉が載っているのもまたちょっと違う感じがするのだ。

表紙の調理ストーブで温めたピザと筆者が愛聴する
ブラック・キャット・ボーンズの『有刺鉄線サンドウィッチ』

 撮影後、炭火で温めたピザは「チーン」とはぜんぜん違って美味しかった。その写真はブラック・キャット・ボーンズの『有刺鉄線サンドウィッチ』と絡めて洒落で撮ったけど、本には載せるべき場所がなかった。当たり前だよね。

(2016年10月11日更新) 第131回に戻る 第133回に進む


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田中伊佐資(たなかいさし)

東京都生まれ。音楽雑誌編集者を経てフリーライターに。現在「ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」「ジャズ批評」などに連載を執筆中。著作に『音の見える部屋 オーディオと在る人』(音楽之友社)、『僕が選んだ「いい音ジャズ」201枚』(DU BOOKS)、『オーディオ風土記』(同)、『オーディオそしてレコード ずるずるベッタリ、その物欲記』(音楽之友社)、監修作に『新宿ピットインの50年』(河出書房新社)などがある。
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