「授業の遅れを取り戻す」に対する、ある学校の姿勢

2020年6月12日

子どもたち、保護者の皆様へ

子どもたちがホッとして過ごす時間を

6月10日の山梨新聞1面には、こう書かれていました。
「5市町村が7コマ授業 県内全公立小中遅れ挽回へ 夏休み短縮」
新型コロナウイルス感染拡大での長期休校に伴う学習の遅れを取り戻すため、富士北麓地域などの小中学校は1学期に1日7コマの授業を導入しているそうです。放課後や早朝にジュ御油をするとのこと。私はこの見出しをみて、思わずぞっとしました。
コロナ禍の世の中で、子どもたちは家にいて、どんなに不安な日々を過ごしていたことでしょう。友だちとのつながりを分断され、孤立を強いられて過ごした日々はどんなに心細かったでしょう。くり返しメディアで伝えられる感染者数、死者数、失業、不景気、虐待、差別や偏見まで、これほどの恐怖をこれまでに浴びつづけるようなことはなかったでしょう。大人も子どもも、その心に深く影響をうけ、傷ついているように思います。
 この「授業の遅れを取り戻す」と言った考え方ですが、私たちはこうした論調で子どもたちを追い込んでいく気持ちにはなれません。そもそも取り戻すという考え方は、学校で働く教員や教育行政の側の都合のよい表現であって、子どもの心に寄り添った考えではありません。世の中の教員は、教育行政や社会、そして一部の保護者たちから課された一定のノルマをこなすために努力をするよう求められ、子どもたちは、その課題をこなさなければなりません。これが当然であるかのように語られるうちは、子どもはますます活力をなくし、萎縮してしまうでしょう。
 あえていいます。子どもの村では、授業の遅れを取り戻すと言った考え方はいたしません。子どもの村で取り戻すのは子どもたちが失った「たのしい時間」であり、優先されるのは、子どもたちにほっとできる時間だと考えるからです。
 小中学校を通して、9年間で、ひとりひとりがみんなと自由に、好奇心や探求心のおもむくままに夢中になって過ごします。どの子もホンモノの体験を通してよく考え、学び、どんな状況が迫ってこようとも柔軟に乗り越えていける力を身につけます。それを卒業生たちが証明しています。そういた普遍的な力を身につけていけるように、職員一同、精いっぱい子どもとかかわって参ります。この先も、ご理解とご協力のほどをよろしくお願いします。

きのくに子どもの村学園   学校長  堀 真一郎
南アルプス子どもの村小学校  校長  堀江 智子
南アルプス子どもの村小学校  校長  加藤 博

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