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初心者向け教材その4 アキピアノ教本

 これは音楽之友社から出ている、幼児〜小学生低学年辺りを対象とした教本だ。3巻に分かれており、対象年齢は5〜8歳とされている。が、実際使った感覚だと、4歳〜小学1年生くらいが妥当で、とりわけ未就学の生徒に対し、効果的に使える教本である。選曲や構成などからして、それ以上の年齢には、例え初心者でも向かない。

 この教本の良い部分は、ソルフェージュ、運指、読譜の基礎、テクニックなど、この一冊で色々と活用できてしまうところだ。教本からの押し付けが少なく、先生の裁量により、いくらでも違う料理法ができてしまうのがこの教本のメリットだ。

 ピアノを始めたばかりの頃は、覚えなければならないことが多く、どういった順で導入していくか迷う先生もいるはずだ。低年齢の場合、理解力の限界があるため、なおさら生徒の発達段階に応じて、興味を示したり、得意そうであったりする部分から攻めていくことになる。この教本は、教える側がその辺りを工夫しながら自由に使える。一応易しいものから始まり難易度が上がっていく構成だが、必ずしも楽譜のページ順にやる必要もない。

 そして何より、子どもの手の大きさ、身体能力、集中力などがよく考慮されており、無理のない範囲で読譜力が身につくように出来ている。一曲が非常に短く、負担を感じずに読譜ができる。また、導入本にしては、ごく少ない音の組み合わせで様々な音形が盛り込まれており、飽きにくい。誰もが知っている曲も収録されており、歌詞が付属するものも多い。生徒を選ばず、安心して使える教本である。

 注意点としては、最初からト音記号、ヘ音記号が登場し、両手で弾くことを要求する教本なので、バイエルのように、片手ずつ練習してから両手に進むという使い方は出来ない。また、読譜は中心のドから左右に広げていく方法を取るため、それに合わせた譜読みの勉強をする必要がある。

 デメリットとしては、シンプルな教本だが、最大限使いこなすには、「バイエル」や「ぴあのどりーむ」などよりも、教える側の力量が問われる印象。また、ごく初歩の間のみに使える教本のため、この教本の終了後、何へ移行するかを考えておく必要がある。3巻全てやる必要性はあまり感じず、要領が良い生徒であれば、くどく感じる場合もあるので、あまり全巻やることにこだわらない方が良いように思う。

 アキピアノ教本は、子どもの導入教本としては優れている。しかし、かなり限られた年齢の、導入〜初歩の間のみ。例え3巻やったとしても、そこからブルグミュラーレベルの教本に接続するには飛躍があり過ぎる。初級の初級レベルしかカバーしておらず、少々中途半端なのが残念なところ。

 

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