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The Georgia Satellites 1986 / ジョージア・サテライツ ファースト・アルバム

バンドは一度解散するが、奇跡が起こる

ジョージア・サテライツは、名前の通りジョージア州アトランタ出身のアメリカ南部のロック・バンド。
1980年まで遡ってギター&ボーカルのダン・ベアードからスタートし、4年近く膨大なライブ活動、デモ音源の録音など活動の道半ば一度解散する。

しかしマネージャーが英国のインディーレーベルに売り込み、活動時のデモテープがミニアルバムでリリースされる。

その後反応が良いので、再結成の機運が上がる。この(わずかな)実績をテコに母国アメリカのエレクトラ・レコードとメジャー契約にこぎつけることができた。

デビューアルバムの狙いは、「モノラル的な音圧の塊と強固で一体感のある音」

リードとリズムのギター、2本のギターも音がモノラル録音のようにひとつになって混在して聴こえる。
ダン・ベアードのテレキャスターは明快なストローク音に狙いを定めている。
歯が抜けたような彼のボーカルちょっとダサいが、カッコいい。
ドラマーのマウロ・マゼランの音はレッド・ツェッペリンのドラマーのジョン・ボーナムのスタイルに近い。「ドン、ドシャン」と、重低音が一味違う

本作品はビルボードのアルバム・チャート、最高位5位を記録。
アトランタのローカル・バンドが逆輸入の形で奇跡を起こした。

メンバー

ダン・ベアード ギター & ボーカル
リック・リチャーズ  リード・ギター
リック・プライス  ベース
マウロ・マゼラン ドラム

曲目
Keep Your Hands to Yourself
Railroad Steel
Battleship Chains
Red Light
The Myth of Love
Can't Stand the Pain
Golden Light
Over and Over
Nights of Mystery
Every Picture Tells a Story

曲目抜粋所感

Keep Your Hands to Yourself

ローカル色を強調したプロモーションビデオがMTVのヘビー・ローテーションに伴った結果、第一弾シングル・カットのプロモーション・ビデオは、ビルボードのシングル・チャートで最高位2位を記録する。

弾きこまれた傷だらけの2本のギターにうねる大音量の直球ド正面のドラム。冒頭の5弦ルート開放のAのコードをザクザク刻むリズム・ギターは膨大なライブで弾き倒した結果、テレキャスターのギターの木材が鳴っている。

隠しようの無いホンモノのクラシックなロックがMTVから突然現れた。

Railroad Steel

2曲目からベールを脱ぐ。叩き上げのリアルなバンド・サウンドが全開。
スピード感あるギターのテレキャスターのリフとリズムギター。
畳みかけるリード・ギターのリック・リチャーズのレスポール・ジュニアの
マーシャルアンプ直の爆音ソロ。
自然とギターを弾きたくなってくる。ソリッドなギターのコンビネーションがグイグイ迫り、気づくとエア・ギターをやっている。

Red Light

リック・リチャーズの使用ギター、ギブソン社のエントリー・クラスの
レスポール・ジュニア。滅多に聴けない抜けた良い音で、このギターを長い年月をかけ、身体の一部になるまで弾き込んだ音がギターの音が聴ける。

例えばキーがEなのでギターの開放弦のソロは良く鳴って、響いている。
ペンタトニック・スケールを基本として、繰り出すフレーズのタイミングや
ローポジションからハイポジションまで満遍ない指板のスケール展開と綺麗なフィンガリング。音の数と構成もパーフェクトな演奏。

Nights of Mystery

作品の中でアコースティック・ギターが入っている、カントリー寄りのナンバー。アコースティック・ギターの乾いた美音が聴ける。
リックのエレキのギター・ソロはメジャーペンタトニック主体のカントリーフレーズ。
メジャーペンタのタイム感のあるフレーズを聴くと、デビューアルバムだが新人バンドでは無い、成熟された音楽なのだと認識できる。
ラストの曲に向けてアクセントになっている。

Every Picture Tells a Story

前の曲のアコースティックギターのストロークから継ぎ目無くアルバム最後の曲に入る。ロッド・スチュワートのカバーで、オリジナルよりもグイグイ来る快感重低音だ。

ジョージア・サテライツというバンドはアメリカンロックだが米国だけど、大きく影響を受けているのは、ローリング・ストーンズとロッドがボーカルのフェイセズのブリティッシュ・ロックだったりする。

特に中心の、ボーカルのダン・ベアードはボーカルはミック・ジャガーとロッド・スチュワート、ギターはキース・リチャーズのテレキャスターの影響が大きい。
ドラムもボンゾを彷彿させるし、やはりブリティッシュでそういうところも興味深いし、インディーで出したミニアルバムもこういう音楽の影響が親しみを持たれた理由の1つかもしれない。

総論

ライブを見ずにイギリスでリリースされた6曲のEPレコードから再結成を促す評価までに至ったのは、膨大なライブで習得した叩き上げのギター・サウンドが作品でも充分に伝わっていた証拠であった。

そしてそのホンモノのギター・バンドの魅力を諦めずに外国、イギリスに売り込んだマネージャーの執念が無ければ奇跡は起きなかった。

そして作品通してちょっとダサい、というのはロックの大事なスパイスであった。

1986年製のロックの名盤。

追記 2本のギターの相性

作中で聴こえるダン・ベアードのフェンダーのシングル・コイルのピックアップのテレキャスターとリック・リチャーズのP90のピックアップギブソン・レスポール・ジュニアの2本はメーカーが異なるが、弾き方によって近似性が出てくる。

ギターのピックアップのパワーが一緒では無いが少し近い。ギブソンに多く搭載されるハムバッカーのピックアップよりも安価で磁力パワーも落ちるP90で作中のギターはリアの1個のみ。
テレキャスターはシングル・ピックアップだが、個体差でパワーがものすごくあるギターも存在して恐らくP90のジュニアと同等に近いと作品を聴いた所感だ。フロントはほぼ使ってない。

2本同時にリフやストロークをさらにマーシャルのパワーのあるアンプで弾くと両方音がほぼ似ている。モノラルに近い録音だと一体感が増している。

追記でリック・リチャーズは本来カリッと固い音のするリアピックのみのこのギターを、温かみのあるマイルドな音を出している。ピックの持ち方や角度や力感など様々な試行錯誤をして、沢山ライブでギターを実践で鳴らしていくと「そういう音」が出せるのだと思う。

終わり

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