ブリューワー & シプリー /シェイク・オフ・ザ・デーモン 1971

◆概要
マイク・ブリューワーとトム・シプリーのデュオ・グループで1971年のアルバム。2人同時にリードで歌い、彼らでしか聴けないハーモニーが魅力的でとても印象に残る。
マイク・ブリューワーのアコースティック・ギターがマーティンでトム・シプリーがギルドを使っている。

アコースティック・ギターのプレイはストロークで鳴らしても、難易度の高いフィンガー・ピッキングでもそれぞれ綺麗に粒立ち良く演奏してる。

カントリー、ブルース、ロック、フォークの各収録曲の作風によって録音の聴こえ方、歌やギターの鳴動具合を臨機応変に対応している。

マーティンとギルドのアコースティックギターの美音をそれぞれの鳴動で味わういう聴き方、楽しみ方ができる。※ヘッドフォンかイヤフォン推奨

ジャケットの2人の眼光鋭い面構えに内面にある自分達の音楽に相当の「確信と自信」を持っている。

◆参加メンバー
マイク・ブリューワー - ボーカル、ギター、ピアノ、マウスハープ、パーカッション

トム・シプリー - ボーカル、ギター、ベース、バンジョー

マーク・ナフタリン - ピアノ、オルガン、ヴィブラフォン
exポールバターフィールドブルースバンド

ジョン・カーン ベース

ジョン・チポリーナ –
エレクトリック・ギターとスライド・エレクトリックギター
ex クイックシルバー・メッセンジャー・サービス

ドラムス複数
スペンサー・ドライデン
exジェファーソン・エアプレインとニュー・ライダーズ・オブ・ザ・パープル・セージ

リトル・ジョン・ハートマン3世

グレン・ウォルターズ

ホセ・エリア コンガ、ボンゴ、ティンバレス

デヴィッド・ラフラム  エレクトリック・ヴァイオリン
ex イッツ・ア・ビューティフル・デイ

◆曲目
Shake Off The Demon
Merciful Love
Message From The Mission (Hold On)
One By One
When Everybody Comes Home
Working On The Well
Rock Me On The Water
Natural Child
Back To The Farm
Sweet Love

◆曲目抜粋

Shake Off The Demon
左右各チャンネル前面にアコースティックのストロークが軽快に聴こえる。並行して片方のチャンネルでペダルス・ティール風に弾くエレキのスライド・ギターが聴こえる。ここで聴ける多少地味っぽさ（控え目な演奏か）がグレイトフル・デッドに通じる雰囲気を醸し出している。
シャウトする声量のせいかこの曲だけボーカルが多少奥に引っ込んでいる。

Merciful Love
3本アコースティックギターでバッキング用のストロークとメロディ用のフィンガーピッキングと異なったメロディを奏でて幅を持たすためにモーダル・チューニングのギターが聴こえる。3本それぞれ絶妙に流麗だ。

そしてチューニングも半音下がったEがキーのコードだ。この狙いは、ギターにとって開放弦を綺麗に響かせるのと同時に半音下がったことで重たい雰囲気を敢えて狙って作曲されてる。

タイトルのように慈悲深い讃美歌の様なコーラスと抑制された歌がはかなくも美しい。この作品のハイライト。

Working On The Well
ブルージーな曲で、マーティンの爆音アコギでリフを弾くと、エレキと違った野太い生々しさが出る。
（エレキも別途に入ってる）バンド形式の曲で、楽器陣がラウドでタメのあるブルージーな曲なのでボーカルは声量大きくてシャウトする。

それに対して2人のリード・ボーカルは少し奥に引っ込まして、声量の整合残響を加えるといったところがが伺えるのがポイント。
高音域シャウトの2人のリードボーカルのハモリという点も、聴きどころ。

One By One
フィンガー・ピッキングの主体でサビのでストロークのギターを入ている。異なった弾き方がうまく整合してる。左右ののアコギの鳴動が綺麗。アコギの音の配置と2人のボーカルの配置が非常に上手く収まっている。

◆総評
2人の音楽的な感性と美学、価値観がぴったり一致してる。
こうした奇跡によって2人にしか出せない魅力が生まれている。
歌唱に対して「自信と確信」を持っている。

「Merciful Love」の曲はとても際立つ美しさを放っている。

このグループの出すハーモニーやサウンドは、爽やかな中に潜む「影」や「憂い」といったところが、バーズやビーチ・ボーイズとはまた違ったウエストコースト・ミュージックの傍流が存在しているという貴重な作品。

曲の収録時間も全部短いので、さらっと聴けるようになっている。