遠い夏の夢空蝉

もう分からないよ
もう眠れないよ

夜、海、空、雲
窓辺に薄い月
春、花、風立つ
私はもう…

遠い明日の浅い日暮れ
一人の部屋、透ける意識
消える体躯に今を重ね
涙惑う、薄花色空

記憶の隅、夕暮れ時
隣歩く、掠れる指
何も言わない君の影は
崩れてゆく、零れてゆく
あの四月を思い出せない
忘れてゆく

白、凪、告ぐ余命
二人は嗚咽する
暗い赤、霞む未明
私はなぜ…

遠い夏の夢空蝉
見ることの無い淡い景色
逃げるように、叫ぶように
声にならない残響残して

海沿い晴れ、君はここに
「どうして君が泣いているの」
濡れる歩道、抱く右手
二人の声が波風に溶けていく

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