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#56 ジェイク・シマブクロ『グレイトフル』

鈴木さんへ

 エアロスミスって50周年だったのね。私も「ドリーム・オン」が好きですね。いつ聴いても新鮮な高揚感があって、クセになる1曲だと思っています。70年代にデビューして、あるサイトには常に第一線で活躍とあったけれど、でも、80年代に入ってからしばらくは苦戦を強いられていたはず。だから、私の中でのイメージは”不死鳥”というもの。そんな彼らだから、引退なんかしないんじゃないかと…。
 一度六本木のミッドタウンを歩いている時、前方からイチャイチャしている外国人のカップルがいて、遠目にも女性が若いとわかったんだけれど、目の前に来てビックリ! 男性はヴォーカルのスティーヴン・タイラーだったんですよね。心の中で、「子供より絶対に若いはず」なんてつぶやいたことを今でも覚えています。一方で、これだからこその色気、セクシーさなんだと妙に納得もしました。今ではいい思い出です。

ジェイク・シマブクロ『グレイトフル』

 ジェイク・シマブクロと言うと、4弦しかないウクレレで超絶技巧を発揮して、クラシックもクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』も弾いてしまうことで、ウクレレのイメージを覆し、その可能性を探求し続けている稀有なアーティスト。その彼が地元ハワイのミュージシャンをゲストに迎えて、ゲストが選んださまざまな曲で共演している。しかもハワイ語で即興演奏を意味する「カニカピラ」で演奏しているので、ハワイ特有のゆったり感とか、親密感とか、ナチュラル感といったものが演奏から伝わってくる。アルバムは2枚組23曲もの収録で、そのなかにはハワイの伝統歌も含まれていて、ハワイアンとしての彼のルーツにも触れられるが、白眉はDisc1冒頭の2曲だ。
 まず1曲目は、70年代に日本でも人気のあったセシリオ&カポノのヘンリー・カポノとの『セイリン』。親密感のなかから2人が音楽と真摯に向き合い、互いにリスペクトしあっていることが演奏からヒシヒシと感じられる。また、2曲目のゲストは、ジェイクが子供の頃お父さんに連れられてライヴに行っていたというスラックキー・ギターの名手、ブラザー・ノーランド。そんな彼がジェイクのウクレレに、「ワンダフル、ワンダフル、マン」と思わず上げる感嘆の声にまた感動が広がっていく。
 ユニークなところでは日本でも人気のシンガー、ライアテア・ヘルムは、中島美嘉の『スターズ』を日本語で歌っている。この曲は、ライアテアが来日中に耳にして気に入った曲で、いつかレコーディングしたいと思っていた曲だとか。その日本語の発音が日本語が話せない人のものだとは思えないほどで、この曲が本当に好きなんだなぁと思わせてくれる。また、ジェイクと全米ツアーをしたことがあるシンガー・ソングライターのロン・アーティス・ザ・セカンドは、ジェイクのオリジナル楽曲『一期一会』に歌詞をつけて英語と日本語で歌っているのだが、日本語の歌詞に思わず涙がこぼれる。
 この新作、ジェイクは、前作『ジェイク&フレンズ』の続編と位置付けていて、デュエットアルバムという点ではそうだと思うけれど、企画した背景にはコロナ禍で経済的に苦しんだハワイと、ハワイ音楽界への恩返しというか、ジェイクなりのオマージュがあるのではないかと思う。
                            服部のり子


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