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ダイナミックプライシングで、お客さんが減っていく!?

音楽教室を経営している以上、「月謝をいただく」とはどういうことか、理解と思考を深めていく必要があります。提供するものの対価として、お金をいただくわけですが、古くからある月謝というスタイルは、当たり前すぎて、でも、本当は当たり前では無いかもしれない。そんなところを起点として、最近のお金にまつわるキーワードについて考察していくと、月謝というものの実像が見えてくるのではないか。そんなことを考えています。

今回は「ダイナミックプライシング」について、私なりに考えてみます。


細かい定義はともかくとして、ダイナミックプライシングは、消費者の需要と供給に応じて価格を変動させるものです。例えば、混んでいるときは料金を上げて、すいているときには下げる。人が分散し、収益を最大化できるという風に言われています。

例えば、飛行機やホテルは、ゴールデンウィークなどの繁忙期に取ろうとすると、びっくりするほど高額になっていますよね。そこで断念するのか、無理してでも予約を取って行くのか。消費者は頭を悩ませるわけです。これがいわゆる、ダイナミックプライシングです。

ここで、別の例を考えてみます。

例えば、行楽地の素朴な宿。まだ行ったことはありません。普段は1泊8千円ほどのようですが、ゴールデンウィークに4万円になったとします。4万円払って泊まったら、どのように感じるでしょうか。きっと、4万円には見合わない宿だったとがっかりするでしょう。でもこれも、ダイナミックプライシングが生み出した結果です。

双方ともに、収益は最大化されるのでしょうが、何か、腑に落ちません。
極端なこの2つの例。何が違うのでしょうか。


ダイナミックプライシングを適用して良いのは、「価値が認知されているもの」であると、私は考えます。経験や体験をしたことがあり、「どういうものか」わかっている場合には、決定を下す際にサービス自体の価値は考慮されていません。想定したサービスを前提として、料金を飲めるか飲めないかで、決定を下しています。

しかし、未体験のサービスに関しては、「どういうものかわからない」状態で、高い、安い、を判断しなければなりません。ですから、「サービス自体への期待」も含めた判断になっているように思います。いったん予約が取れてしまうと、料金が高い理由(時季によるもの)が抜け落ち、当日は頭の中で、料金とサービスレベルが直結するので、4万円の体験ができなかったという事実に対して、がっかり感が出てしまうのだと思います。

短期的に見れば、この宿も、収益を最大化できるのかもしれませんが、「不満を抱くお客さんを作り出している」という事実は、重く受け止める必要があるように思います。

モノについても同様で、売れるものは価格を上げる、売れないものは下げる、ということを繰り返していると、いつも駆け引きを仕掛けられているような気がして、消費者が、その店を選ぶ理由が乏しくなっていくような気がします。「いつもこのお店で買う」という愛着・安心感に由来する習慣は次第に無くなり、一番安い店を探して買うというところに落ち着きそうな気がしますが、どうなんでしょうか。

需要が旺盛だからこそ可能なダイナミックプライシング。需要が減った時に、短期的な利益に走り、固定ファンを作ってこなかったお店はどうなってしまうのか。結果が出るにはもう少し時間が必要ですが、長期的に見たら、もしかしたら、マイナスの影響の方が大きくなっていくのでは。そんな心配をしています。

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