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富士登山地獄備忘録 2012 ⑦

ついに下山

雨もだいぶマシになってる。それでもまあまあ降ってるけどさ。
気合いだーーっと、、、でもあの地獄岩を降りるなんて怖すぎる。

と思ったら。なんて爽やかな下り道なんだろう。
灰と砂、なだらかな下り。。神様!ありがとう!!
須走道、可愛い奴!

道も広いし、かなりいけるかも。ぬふふ。サクサク降りる。
でもね、だんだんヤられるんですよ、ザーヒーが。いや、ヒザが。

みんな下りで調子に乗ってヤられると聞いていたので、慎重に降りよう。
歩幅はなるべく小さく、スティックをうまく使って。

マツド隊長に言われたことを守るんだ。下りはスティックを前に。
わたしって真面目。

サクサク。サクサク。
たまに岩もあるよね。サクサク。ゴツゴツ。サクゴツ。
ハジメちゃんはヒザの調子が悪いらしいので、そこも慎重に。

行きとはうって変わって会話が弾む。ただ、雨風はまあまあすごい。
またもや下から打ち付ける。
顔にくるねえーなんて言っていると、またハジメ神登場。

兵士が使うような網のストールを貸してくれた。網目から前も見える。
はあ~優しいっす。優し過ぎるよ、アニキ。

しっかり下りを確認して、標識ではなく柵に表示された道を行く。
段々植物も見えてきた。
ただ、かなり等間隔に植わっていて、人工的なにおいがする。
なんなんだよ、富士山。

よく女の子がこんな登山できたなんて、
これはかなりハードコア富士山だよ、なんて会話。
わたしがいたばっかりにごめんね、なんて会話も。ほんまにすみません。

仕方ないよ、それぞれのペースがあるんだから。ハジメ兄貴、じーん。
リサちゃん(ハジメ嫁)幸せものおおお!
ハジメ兄貴はちょっとやそっとでは辛いとか言わない人なので
これはかなり信憑性のある発言よ。
みなさん、ほんまにハードコアなのよ。

そして、魔のふわふわロードがやってきた。
一見、黒い砂の道。なので、滑るようにザーッと進めば楽勝!
楽しいじゃん、富士山よぉ。

ザーッ。ザーッ。ザーッ。
ゴツ。痛っ。あ、あれ?
黒い砂の中に結構な大きさの岩が隠れており、ザーッといけると思いきや、ゴツッと足に当たって運悪く足首ゴリっ。となることも多数。

やっぱ、ふざけんなよ、富士。。
しかも。魔のふわふわロードはとてつもなく長い。
かかとから砂に突っ込んで、こう、上手く、。
いかないんだよ。。。ちくしょう。

景色が変わらないと疲れる。
途中2回こけた。しかも、ザックが重くて起き上がれないという無様さ。
他の登山客に大丈夫ですか?と心配される…。
どこもかしこも砂だらけ。
ちきしょう。

だんだん追い抜かれることが増える。
原宿に遊びにきました♡みたいなヒラヒラ靴下の女子にも抜かれた。
でも、あいつの生ぬるい靴よりはダメージ受けてないぜ…。
非常にレベルの低い闘争心が芽生える。

そして、玄人登場。道をジグザグに歩く。
距離はかかるけど、ヒザへの負担が軽減!
しかも景色がまっすぐ歩くよりも変わるから、こりゃーいいぜ!
ハジメちゃんとジグザグ歩行にテンションあがる。
しかし、ヒザがもうガクンガクンで曲げることが辛いわたしには
その幸せは一瞬でした…ガクガク。

看板。「山小屋まであと20分」の文字。
やたーーー!なんて簡単にはもう喜ばない心が腐ったわたし。

どうせ、山の20分なんて普通の感覚の30分ぐらいだろうが…。
とか思っていたら、ほんとに30分。はあ…かれこれ10時間以上歩いてるぜ…正味休憩のトータル時間は1時間にも満たない。

お腹も空いてきた。そりゃ歩きっ放しだもんね。
でも、立ち止まると震えが止まらない。
しかし、今ここでカロリーいれねば。
ハジメちゃんがおにぎりを分けてくれた…ごはんですよのおにぎり…。

う、うんまあああ。塩分最高や。
目指す山小屋ではないけど、山小屋が見えてきた。

疲労感いっぱいの他の登山客。
富士オープン期間に山小屋に住んでいると思われる方々。
この雨の中、スカートで買い物袋を持つ女子。だ、大丈夫?
でも、めっちゃ可愛いかった。山小屋、侮れないな!
6号目辺りのポニーテール女子がめっさ可愛いぜ、男子登山野郎!
(謎の山小屋宣伝)

やっと、5号目の山小屋。
はあ~と思ったのも束の間、メインの5号目山小屋ではないらしい。
ぬおおおおおおい、どんだけわたしを裏切るんじゃ、富士!!
こんな裏切り者、恋愛でも友情でもあり得ないよ。

休憩。。座ろう。うん。可愛いワンコいた。
普段なら写真に撮るけど、まだ余裕はない。
見つめて心のカメラに焼き付けたから、いい…。キモいけど、うん。

楽しそうなおばさま連中。地図を見てきゃっきゃしている。
腐ったサンマみたいな目で見つめてしまった。
もしかしたら、ケッとか言ってたかも。

そして、暖かいココア。完全にインスタントだけど、んまーーー。
カロリーメイト、ほんまにカロリーのメイトって感じの味。染み渡る。
登山中に初めてトイレに行った。200円。
ハジメちゃんとわたしの鼻水かみ用に
トイレットペーパーをくるくる失敬した。

ここで、やっと携帯がつながる。
ナオコにメールだ。

以下、原文まま。iPhone。

※この時点で8:00でした

<綾子>
なおちゃん、今どこら?無線がつながらず
我々はあと40分で駐車場だよ、
五合の山小屋って見て喜んだのもつかの間、、休憩してるです

<ナオコ>
車!
そっからがキツイから休憩した方がいいよ。ゆっくりで、

<綾子>
ういいいす
もう膝死んだ 地獄やわ、頂上にはいったの?

<ナオコ>
いった\(^o^)/しぬ

<綾子>
やんな、、富士山嫌いになりそ

メール以上。
こ、こっからがキツイのか…。
ナオコのありがたいんだか絶望なんだかな情報(笑)

でも降りるしかない。10時間も歩いてんから、40分くらい!!
どうやら、メインの5号目の駐車場までは森林道。

大好きな予感~富士山で唯一くらい(?)楽しかった道。
オニアザミ、キノコ、シダ、コケ、いろんな植物が見れて気分が晴れた。
これで虫いてたら最高やのに。

足は相変わらずガクガクだけど、
木の根が入り組んで怖いところもあるけど、元気になれた。
小川なんかも流れちゃったり。
これ、天気よかったらほんとにるんるんな道なのにな。

途中、大きなキノコで盛り上がっていると。
おばさんがやって来て、シイタケかシメジかみたいな発言。
いやいや、これどう見ても違うっしょ…。
自分もスーパーで買って台所で味噌汁とか天ぷらにしたことくらい、
あるっしょ、と笑顔を浮かべつつ心で悪態をつく。

森林道ごときでは、まだわたしの心の闇は取り払われない。

そして!人工的な階段が現れた!めっちゃ大理石かコンクリートの人工さ。こんな人工的なモノに喜んだこと、ない、さ。。

山道の終わりは神社のお堂があった。挨拶をして、階段を下りる。
ガクガクガクガク、なんとか降りる。

うおおおーーーアスファルト万歳!いえーーー!
見覚えのある山小屋。お土産屋さんもあったのね。夜は気づかなかった。

おばさま達が「おかえりなさ~い」と、こなれた挨拶。
濡れた靴もそのままでいいので、とお土産屋さんに誘導される。
暖かいお茶を出してくれた。き、気が利くーーー。

キノコ茶。茶、というかキノコスープ。
美味しい~じんわりと、キノコのお出汁出てる。。生き返る。

ハジメちゃんは、
「あ、俺このお茶ダメだわ」
で、ですよね…。普通のお茶がいいよね…。
男子はあんまりキノコ好きちゃうよね…。

お土産屋さん、軽く物色。
正直、誰が買うねんっていう富士山定番土産の数々。
ハンドタオル。ちょうちん。キーホルダー。

どっかで見た富士山文字入りの軍手。。
勢いで買っちゃうよね、小中学生とかは…。
もうすぐ30歳になるわたしも普段なら買ってしまいそうだけど、
心が冷め切っているので買わないよ。

こけもも酒と富士山ポストカードに少し心は動いたけど、
とりあえず駐車場、行くかな。

店の外には水の入ったバケツとブラシ。き、気が利くーーー(2回目)
黒い泥を落としたら、自分の心も綺麗になっていく気がした。
あれ、富士山って霊山だよね?パワースポットで、清められるんよね?
心が荒んでいるのは…なぜ?

いやいや、大丈夫。
もう駐車場は目の前さ。
マツド隊長もこんなに近くの駐車場に止められてラッキーとか言ってたし。
さて、駐車場はどこだ。

「綾ちゃん、これ登るんだよ、苦笑」
え……心臓破りの坂の見本みたいな坂…スティック…役に立つよね…。

「富士山、マジFU◯K」

ハジメちゃんにサライを歌ってもらいながら、
24時間マラソンの走者の気分…みんな…元気かい…。
(サライ歌ってた時に、後ろのおじさんが爆笑してたのは二人だけの秘密。)

到着したよ…。
みんなはすでに着替えていて、休憩、寝ていた。当然、疲れ切っていた。

そこで、めっちゃくちゃテンションの高いわたし登場(迷惑)
「いやーーーもお地獄ですわ!」
その後もしつこく地獄地獄言いまくった。うるさくてごめんね、みんな。
そして、長いこと待たせてごめんね。ありがとう。

このあと、銭湯に行って命の洗濯をして生き返って。
その後のことはハッキリ憶えてなくて、帰宅して泥のように眠り込んだ。

で、両足の中指の爪が取れた(笑えない)。
全く痛くなくて、ぽろっと。役目を終えてくれた爪たち。ありがとう。

なんと、下からはすでに新しい爪が生えていて非常に驚いた。
人体の不思議すぎやろ!ニュータイプか!

すごかった、富士山。なめてないけど、すごかった、すごすぎた。

12年ぶりに振り返って、忘れてることもたくさんあったけど、
過酷なことは我ながら十分に伝わった。よくぞご無事でという気持ち。

改めて、命の恩人のハジメちゃん、
本当にありがとうございました(涙)

先導してくれたマツド、
楽しさと明るさをくれたナオコとシホちゃんもありがとう!

もう富士山は(たぶん)登らんけどな!!!

12年の時を経ておわり。

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