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【2019シーズン】ヤクルトスワローズ観戦記

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ヤクルト観戦記、2019年シーズンはこちらにまとめて入れていきます。(オープン戦含む) 勝った日も、負けた日も、試合のある日は毎日更新しています。
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2019年7月の記事一覧

いつか三線の花を、咲かせるように【7/30横浜戦】

ほしくんが、マウンドに立つのを、民謡居酒屋の「郷家」の席に座り、スマホで見ていた。私は、むすめを呼ぶ。私の膝の上で、むすめがほしくんを見つめる。粘られた末に、ほしくんは、佐野をレフトフライに打ち取った。 1つのアウトで、私は泣きたくなる。おかえり、おかえりほしくん、と思う。 ほしくんは、続くソトを三振に打ち取り、筒香をセンターフライに打ち取った。私の表情を見たゆずこが、「逆転したの!?」と聞く。「ううん、ほしくんが三者凡退に打ち取った」と、私は答える。でもこれは、実質逆転

平和を祈る島で、ヤクルトを思う【7/28広島戦●】

そのイニングを見ている時には、なんで四球だらけ。。と、思って大きなため息をつくのに、マウンドを降りるその表情が映し出された瞬間、気持ちはそのピッチャーもっていかれる。 それはこのチームを、そしてこのチームで投げることになった人たちを、好きになってしまったからなんだよな、と、民謡居酒屋の「和おん」に向かう車の中で私は思う。 もっと言えば、そのチームを好きになった人たちのこともまた、好きになってしまったからなのだ。なっしーを思う、誰かを思う。そうすると急に、胸が痛む。窓からは

目の前の不完全な景色は、不完全な私の投影かもしれない【7/26広島戦●】

カレー屋さんは、15時にしまっていた。 今日は美味しいカレーをテイクアウトをして、夕日を見ながら晩ご飯にしよう。と、決めていた私たちはしばし唖然とした。 グーグルマップによると、開店時間は11時となっている。なんと、4時間しか開いていない。 と、まあ、この島にいるとこんなことがしょちゅうある。お気に入りのおそばやさんは、週末はもちろん、連休にも閉まってしまう。書き入れ時じゃないかと思うのだけれど、そんなもの多分関係ない。そもそも連休も週末も、こちらの都合といえばこちらの

宮古島の居酒屋では、ヤクルトの試合を流していた。【7/25巨人戦○】

お気に入りの居酒屋に着いたら、なんとテレビで「巨人vsヤクルト」の試合を流していた。 「ちょっと!!ヤクルトやってるんやけど!!」と、私は少なからずテンションが上がった。いやまあきっと、お店の誰かが巨人ファンなのだろうけれど。つまりそこで流されているのは多分、「ヤクルトの試合」ではなく「巨人の試合」だろうけど。でもそんなもの関係ない。私にとってその島の居酒屋で流されているのは「ヤクルトの試合」だ。 オリオンの瓶ビールとさんぴんハイを飲み、ソーメンチャンプルとアーサーてんぷ

宮古島の小さなバーと、カツオさんの167勝と。【7/24巨人戦○】

そのバーは長いあいだずっと、私がこの島に来る意味みたいなものだった。 冬の週末三連休のチケットを取ってふらっとやってきて、昼間はぼーっと海を眺めてはひたすら本を読み、夕方から真夜中までその「アルケミスト」というバーで飲み続けた。 母が亡くなった時も、結婚が決まった時も、妊娠した時も、私はふらっとその小さな島の小さなバーへ行った。バーテンのひでさんにぽつぽつとそのことを話したり、話さなかったりした。なんだか自分の人生にずっと、その場所があり続ける気がしていた。 だけどどん

栗山さんは言う。「あそこで1本出ていれば…」には、全く意味がない、と。【7/23巨人戦●】

自分にはどうすることもできないつらい現実が目の前にある時。そのモヤモヤを解消する(ような気になる)一番てっとり早い方法は、誰かを、もしくは、自分を責めることだ。 ヤクルトがまた、またもやサヨナラ負けをする。一体今季は何度、このサヨナラを見るのだろう。少なからず、心は痛む。大きな大きな、ため息をつく。とてつもなく明るい前向きな気持ち、というわけではまあ、もちろん、ない。 「なんで打たれるかなあ」と、もちろん思う。「なんで打てないかなあ」と、思う。「なんで守れないかなあ」と、

夜はささやかな絶望に満ちているけれど【7/21阪神戦●】

ホテル近くのコンビニで、ポークたまごおにぎりとかタコライスとかサラダとかを買い込み、近くのビーチでばんごはん、ということにした。 なぜかWi-Fiのはいるそのビーチで(すごい時代だ)、去年と同じように、私はヤクルトの試合を見ていた。去年と同じように、ヤクルトはしょっぱなからピンチを迎え、そしてチャンスをつぶしていた。 だけど南国のビーチでiPadを通じてみる山中さん、というのはなんだかとても、目の前の景色に馴染んでいた。もちろん、いつだってヤクルトは勝ったり負けたり負けた

この海さえも、いつかどこかにたどり着くように 【7/20阪神戦●】

東京はいつまでたっても梅雨があけず、ずっと肌寒い日が続いていた。「神宮のビールが美味しい季節」には程遠い。いつまでも、カイロをしのばせて神宮に通った日々が続いている気がする。夏なんて幻なんじゃないか、という気すらしていた。 だけど那覇空港から出た瞬間、まとわりつく湿度と気温は確かに「夏」だった。そう、ちゃんと夏は来るのだ。季節はいつだって、巡ってゆく。 不安定な機内Wi-Fiで、試合の配信は何度も止まった。もう諦めて、本を読み始める。ヤクルトは点を取ったり取られたりしてい

勝つことだってある、という希望を胸に【7/17巨人戦○】

ツーランを打たれた山田大樹さんを、ベンチのみんなが拍手で迎え入れた。監督とコーチはじっと、グラウンドの方を見ている。 元サラリーマンとしてはなんとなく胃がきゅっとしながら、同僚のあたたかさにほっとした。みんないつだって、必死で前を向こうとしているのだ。それは16連敗中のベンチからでだって感じたことだ。 待ちわびた夏の日差しが、少しだけ注いでいた。私の思う「夏!」にはまだほど遠いのだけれど(そしてその季節はあまりに短いと知ってしまったのだけど)それでも夏の始まりの空気をよう

あの日11号館で「愚直であれ」と学んだように【7/16巨人戦●】

それは結局、恋と同じなのだ。 基本的にはうまくいかないことも、求めれば求めるほど指の間をすりぬけていくことも、本当の気持ちは口には出せないことも。 報われぬ恋なのだと知っている。どれだけ笑っても、例えば同じ時間を過ごしても、その恋が、求めるままの結末を迎えることは決してない。 だけど、それは私の人生にかすかな痛みを伴いながら、ささやかな彩りをもたらす。 誰かにとってそれは、生きているなぁ、と感じられるものかもしれない。それはほぼ痛みで形作られたものだけれど、でも雨に打

良くも悪くもそれは想像をこえていくから、ドラマになるのだ【7/15巨人戦●】

「ああこれはだめだ絶対取れられる・・・」と、いう場面を結構何度か迎えた。ランナーを背負ったうめちゃん、回またぎのうめちゃん、ヒットを許したこんちゃん…。でもその私が恐れた危機は、意外なほどにあっさりと乗り切った。 そのたびに私は「うんうん、いけると思った」と、手のひらを返した。 だけど回またぎの五十嵐さん、は、その嫌な予感がしっかり的中してしまった。そのエラーと2ランは、とてもとても痛い3失点だった。息も絶え絶えになんとか守ってきたリードは、そこでがらがらと崩れていった。

阪神ファンと、広島ファンと、ヤクルトファンと、オールスターと。【7/13オールスター戦○】

「お昼くらいに集合してお好み焼き食べに行こうよ。とりあえずお好み焼き」 いつものことだけれども、この人たちとの約束はぎりぎりまでとてもゆるい。「お昼くらい」が何時かもよくわからないし「お好み焼き」のお店がどこにあるかもわからない。近所に住んでいる友達じゃないのだからもう少し計画的にきっちり物事を決めても良いのでは、と思うけれども、もう10年ほどこんな感じでやってきているので今更変えられるわけもない。そのゆるさが心地よいのだろうな、と、なんとなく思う。 「12時くらい?」「

たいしのバントと、雄平の代打と、それぞれの役割と。【7/10横浜戦◯】

あのスクイズが決まらなかった時のことを、今でも何かあるたび思い出す。あの日、たいしはどんな気持ちでベンチに戻ったのだろう。そして、どんな気持ちで戸田へ向かったのだろう。 今日、たいしは、8回裏、1アウト1塁の場面でバントの構えを見せた。 あの日と同じことを私は思った。いや待って、たいしには打たせてあげて、と。 たいしは、1球目で失敗し、2球目は見送った。あの日のスクイズ失敗が頭をよぎる。でもたいしは3球目でしっかり、見事にバントを成功させた。 ベンチでみんなに笑顔で迎

その1点は重いプレッシャーにもなるけれど【7/9横浜戦●】

去年、宮古島で見ていた広島戦で、初回に4点の援護点をもらったじゅりが、ベンチの中で、えらく不安げな顔をして座っていた。 宮古島のきれいなビーチを目の前に、いやなんでやねん!と、私はつっこんだ。4点ももらったんやん!自信持って投げればいいやん!と、私は海に向かって叫んだ。どちら方面が神宮かはわからないけれども、とりあえず海の向こうに神宮はあるのだろう。 でも今、この時のじゅりの気持ちがなんとなく、わかる気がする。ピッチャーにとって援護点というのは、もちろん心強いものであると