体の輪郭なんて外気の熱で溶かしてしまえばいい。
今日は早く起きようと思っていたのに結局起床したのは昼過ぎだった。それから皿を洗って、着替えを済ませた。
最近履いていなかった白いズボンを久しぶりに履いてみた。白いから視界に入ると気になったけれど、気持ちが上がるからたまには良いと思った。
外に出て自転車を漕ぐ。蒸し暑くて、体と世界との境目が曖昧になっていくような感覚がした。
別に体なんて形を保っていなくてもいいはずだ。感覚が滲み出て柔らかくなれればそのほうが面白いだろう。
店で、食べ物や生活用品を買って、レジに並ぶ。前に並んでいる人は、どちらの列が早く進むか行ったり来たりしている。大して変わらないのだからどちらか選んで待っていればいいのに。私はその人の後ろに並んで、ぼんやり待っていた。
人間はこの数分も待てないようになってしまうのだろうか、と考えると怖くなった。前の人は隣の列へ移動したけれど、こちらも結局すぐに進み、店を出る時間は私の方が早かった。買った量が違うから正しくは比べられないけれど、数分後には忘れる迷いで思考を満たされるのはつまらないと思った。
帰宅して、冷蔵庫に買ったものを詰める。そして風呂に入って、文字を書いて、食事の支度をした。氷を取り出すために冷凍庫を開ける。
冷凍庫の中では、昨夜凍りきれない氷を落としたせいで、小さな氷は漏れ出た水によって、ひとつの塊になっていた。体の端が溶けて、凍って、別の形になってしまっていた。
暑くても冷たくても輪郭は溶けて、周りの空気に馴染んでいく。なるべく周囲と同じであろうと無意識のうちに感覚が動いているんだろうな。
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