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学芸員さんに聞く!博物館数珠繋ぎ企画② 大田区立龍子記念館

こんにちは、ミュゼさぽ代表中尾です!
学芸員さんに聞くおススメ博物館で数珠繋ぎをするこの企画、前回の横山大観記念館に引き続き第二段となります!

今回は大田区立龍子記念館にて学芸員さんにお話しを伺い、なんと館内ガイドもいただきました!前回に増して学芸員さんの色を出した投稿になりましたので、ぜひ最後までお付き合いください!
(今回、取材のため特別に撮影許可をいただきましたが、普段は館内撮影禁止となっております。)

生前に建ててしまう!龍が散りばめられたレア記念館

龍子記念館は近代日本画の巨匠である川端龍子自身の手によって、文化勲章受章と喜寿とを記念して1963年に設立されました。
ここが非常にレアな点で、記念館は偉人の業績や生前の記録を残すため、遺族の方や関係者が設立するところが多いのに対し、なんと川端龍子本人が生前に記念館を設立してしまうという豪快っぷり!

記念館落成記念の彫像

今回お話を伺った学芸員の木村さんにも、その豪快っぷりについてはお話をいただき、明治が始まり絵画界にも様々な潮流が渦巻く中で、横山大観と同じく「俺が時代を創ってやる!」という自意識は強かったのではないかとのこと。
そのためか、川端龍子は独特の日本画を展開します。

それがよく表れているのがこちらの絵。写真でもなんとなく伝わるかと思いますが、とにかくビッグサイズ!自分の何倍あるんだろうというくらいの大きい波濤と鳥の絵画。

分かりやすく、激しく、とにかく大きく。川端龍子はそれまでの日本画のように奥ゆかしい、居間に飾るような絵画ではなく、とにかく迫力のある誰にでもわかりやすい絵画を描こうと新境地に挑戦しました。

この迫力に関してはぜひ現地で味わってほしい!とにかく吸い込まれるようなとんでもないスケール感で、目と心が奪われます。
しかしひとつひとつの描写に関しては緻密で丁寧。細部にわたっても波濤の細やかさや美しさ、鳥の毛並みに関してまで余念がありません。
そして全体で俯瞰しても崩れることのないバランス感覚。いかに優れた絵画技術を持っていたのか、世界観に圧倒されながら息をのんでしまいます。

これだけ大きい絵だと、どうなるか。どうやらサイズゆえあまり売れることがなかったようです。そうして売れ残った傑作は記念館に残り、今も輝き続けると。
何しろビッグサイズのため、川端龍子自身が設計したこの記念館は他の館と比べ、天井が非常に高いです。


ここが私が感じる一番の魅力で、とんでもなく迫力のある川端龍子の絵画ですが、普通のサイズの記念館に飾られるとおそらくその魅力は半減してしまう気がします。
天井が非常に高く、開放感のある空間だからこそ絵画が本来の力を発揮して、来館者が存分に世界観に浸ることができるのではないでしょうか。

もう一つ、川端龍子の絵画をご紹介します。

こちらの臥龍は終戦の三か月後に制作された絵画で、敗戦の衝撃冷めやらぬ中公開されました。いつも猛々しく描かれることの多い龍ですが、こちらの絵画では疲れ切った表情で、どこか切なさを感じさせます。
木村さんのお話によると、この龍は日本そのものを表していると。人も資源も大量に動員したにも関わらず敗戦し、疲れ切った日本をモチーフにして描かれているとのことです。そんな日本を批判するでもなく称賛するでもなく、ただ疲れ切った姿を描く。どこか川端龍子の戦争に対する意識も窺えるようです。

川端龍子は名前の通り、龍というモチーフに非常にこだわりました。設計した記念館もうねる龍の形になっていますし、天井に龍の飾りがそびえていたり、住んでいた家に関しても龍の肌をイメージした扉であったりと、今の言葉で言うならセルフブランディングがしっかりしている印象!

自分の個性にまっすぐだったのかなと木村さんとも楽しくお話させていただきました笑

画面中央、記念館の屋根テッペンにも龍のモチーフが!

以上です!学芸員の木村さんには今回突然の訪問だったにも関わらず館内をガイドいただき、いろいろと龍子に関する楽しいお話まで色々とお世話になりました。
とにかく大迫力の絵画を開放的な空間で体感したい方はぜひ!!鑑賞の域を超え、全身で絵画を味わう力強い体験ができるはず!
また、今回伺った展覧会に関しては、6/9までとなっています!

そして肝心の数珠繋ぎ、木村さんにもおススメ博物館を教えていただきました。次の博物館は…
玉堂美術館です!
大自然に囲まれた川合玉堂の美術館ですね、日本画の巨匠が続きます。

ぜひ次の数珠繋ぎでお会いしましょう!


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