図書館教育の特色 池田菊左衛門 編『圖書館博物館育英奨學事業史跡名勝天然記念物視察概要』

 博物館教育の特色ってなんだろう。

 「モノがあるから」とか「学芸員がいるから」とか「博物館だから」というのは絶対的な博物館教育だと思う。

 学校教育のなかにいると相対的に博物館教育をみることになる。
「教える内容が決まっていない」とか「教えた内容を習熟したかどうかの評価がない」とか。

 相対化する相手(この場合は学校)が変われば、博物館とはここが違うってポイントも変わってくるはずで。

 それは大正13年当時の図書館教育の特色を述べるために、相対化して書かれた学校教育の特色をみればよりよくわかるかな、と。

定義 圖書館は有益なる書物を集め公衆をして其智識慾に従て好む所の書物を最も経済的なる時間を以て自由に便用せしむる所なり。

一、學校教育には就學年限あり、反之圖書館には年限なし。
二、學校教育には一定の團体に制限せらる、反之圖書館は老若男女を問はず一般公衆に對す。
三、學校教育は一差別的階級的で小學校-中學校-専門學校と歴順せねばならぬ、反之圖書館は非階級的なり。
四、學校教育は、學資を要す、反之圖書館教育は之を要せず。
五、學校教育は教師が主体で劃一的、指導的注入的である。反之圖書館は書物が主体で、非劃一的で能動的、自發的である。
六、學校教育は主として新知に力を注ぎ、圖書館は新知に止まらず温故を兼備す。
七、學校教育は劃一的で個性教育を缺くけれど、反之圖書館は個性の向上發展、趣味の養成に適し、學校教育の缺所を補填す。即ち圖書館は近時喧傳さるゝ英才教育、個性教育各個人教育唯一の機関なり。
八、學校教育は断片なるも、圖書館は然らず。
九、學校の書物一冊は一人を利す、圖書館一冊の書は萬人を利す。
十、學校には時間の制限あり、圖書館は之の制限なし。

池田菊左衛門 編『圖書館博物館育英奨學事業史跡名勝天然記念物視察概要』大正13年

 学校も変わったし、図書館も変わった。

 でも「地方だと本が手に入らないー」とか「お金をもっている人しか本たくさん買えないやーーーーん」という思いは、何となく今と共通することはあると思うの。

 そして、そうやって悔しい思いをした人たちが図書館、文庫をつくってきた、パブリックの道をひらいてきたんだなぁと思う。


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