現代的課題の展示から学ぶ ー吉村智博「博物館における表象行為と社会的差別」

 展示で何を伝えるかというのは、しばしば話題にあがる。
そして繰り返し、繰り返し、私たち(学芸員・博物館)が中立であることはありえない。何からのスタンスに立たなければ、展示などすることができない、といわれ続けてきた。

 大抵は、それぞれの専門分野の学問のスタンスに立つのだろうけど、現代的課題については扱いが難しい。「公害」や「貧困」など、そもそもそのテーマを展示するのかどうかでも意見が分かれそう、というか避けて通るものかもしれない。

 でも、きちんと向き合うことでしかわからないこともある。そして、現代的課題の「展示」だけでなく、「展示」という行為全般を考える上でのヒントを与えてくれたりする。

 展示ではまず, 絵図(古地図)を公開する今日的意味を姐上にのせて検討し た。さきにも述べたように,博物館展示は現代的課題をめぐってメッセージを発信できなければいけない,と多くのスタッフが自覚していたからであった。絵図(古地図)の被差別身分記載,例えば「穢多村」や「非人小屋」などの表記が単に過去の歴史的事柄としてだけ捉えられては,展示の意義はまったく失われてしまうのであった。その上で,従来の絵図(古地図)展示の問題点と課題とを整理し,展示公開の意味を再考した。

吉村智博「博物館における表象行為と社会的差別-差異の表象をめぐって-」『人文学報』第100号(2011年3月)


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