MINAMATAの二つの展示 ー平井京之介「運動する博物館 : 水俣病歴史考証館の対抗的実践」

 高校の現代文の教科書にロバート・スコールズ「読みのプロトコル」が掲載されていて、そのなかにW・ユージン・スミスの「入浴中のトモコ」という写真が登場する。

 水俣で撮られた有名な写真であるが、ユージン・スミスは「ロマンティックなもの」として表現する。それをロバート・スコールズは「ピエタ像」というコードで読み解く。

 撮影されている内容は入浴する母子であるが、それにどのような意味をつけるか、それをどのように読み解くのかというイメージをめぐる問題がそこにある。

 博物館もイメージ(モノ)にどのような意味を託すのか、という問題は再三問われてきた。そのなかでも、水俣病をめぐる二つのミュージアムを比較したこの論考は大変面白い。

水俣市立水俣病資料館(以下,市立資料館)と,財団法人水俣病センター相思社(以下,相思社)が運営する水俣病歴史考証館(以下,考証館)の2 つがある1)。両館の掲げるミッションはほぼ同じだが,展示内容には大きな違いがみられる。一言でいえば,市立資料館が「公的」な言説を再生産しているのに対し,考証館は被害者の立場から対抗的な言説を生み出している。

平井京之介「運動する博物館 : 水俣病歴史考証館の対抗的実践」国立民族学博物館研究報告36(4): 531–559 (2012)



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