「アフターコロナでの八女観光の可能性」その④

「はなこ」トラベル
 代表 陶山和之

観光図書館の可能性

観光における地域の図書館の可能性を探ると、様々な新しい観光形態が生まれて来る。
2013年には佐賀県武雄市で某社が指定管理者となり、年中無休、9時~21時への開館時間延長、某社のカフェの併設と、新しい観光施設として衝撃的なデビューを果たした。何と初年度には、人口4.8万人の町に100万人の来館者があり、その年の話題をさらったものの、その後の評価については未だに分かれるところである。
そもそも図書館は社会教育法に基づく図書館法に規定されている性格上、観光行政の中でも意識されていることは少ないが、私自身は近年図書館が有する地域の知的財産が観光地としての魅力の深堀りやその地ならではのツーリズムの展開、観光産業の振興等、様々な場面での地域活性化に寄与する大きな伸びしろを感じている
現在でも全国各地には、観光に対してより近い存在感を示した図書館があるのも事実で、ここにいくつか具体的にご紹介したい。
一つ目は、長野県伊那市立高遠町図書館である。ここでは「高遠ぶらり」と言うアプリを作り、GPSを使って古地図上で、歩く自分が街のどこにいるかが分かる仕組みになっていて面白い。まるで「ブラタモリ」の個人旅行版とも言えるからとても楽しい。
二つ目は、岡山県瀬戸内市民図書館である。ここでは「ウィキペディアタウン」と言うユニークな取り組みを行っている。旅行者や住民が自分で集めた情報をウィキペディアに加筆し街を深掘りするもので、旅行者にとっては自分の手足で得た情報が記入され、旅の思い出にもなり得る参加型システムである。まさに図書館が地域情報の集積や発信拠点になっているケースである。
三つ目は、山梨県甲州市立勝沼図書館である。ここは言わずと知れた勝沼ワインの産地なので、ぶどうとワインについての資料や地域ワイナリーのパンフレット、更には新聞記事の切り抜きまでも揃えている産地情報の宝庫であり、ツーリストにはこたえられない細かな情報が満載である。観光客にとっては、最大の二次情報サポートセンターにもなっているから、やはり図書館の情報発信力はすごい。
この他にも、長野県小布施町、滋賀県東近江市立永源寺、私の好きな茨城県水戸市佐川文庫と様々な画期的な取り組みが見られる。もちろん司書のスキルに依存する場合も多々あるが、観光客へのインフォメーションセンターとしてのコンシェルジュ機能を持つ事は、図書館が今後地域観光への積極的役割を果たす中枢になる可能性を秘めているに違いない。

八女市の新しい「観光まちづくり」の提案の一つになれば幸せである。

(了)

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