「菊宴月白浪」で注目したこと
今日は七夕。
願い事はただ一つです。
歌舞伎座 七月大歌舞伎 昼の部は澤瀉屋の「菊宴月白浪」
長かったけど面白かったです。やっぱり澤瀉屋の芝居って緩急ついていて飽きさせない。それぞれの幕の終わりに必ず盛り上がりを持ってくる。
32年ぶりの上演です。私は初めて尽くしで目が足りないくらいでした。来週にまた観るので冷静に楽しもうと思います。
忠臣蔵のパロディに次ぐパロディ。元ネタがわからなくてもいいと思うのですが、知っていると場面やセリフに「おっ!」となります。登場人物の関係性はわかったほうがストーリーが入ってくるかも。今月の筋書に相関図が載っているので参考になりそうです。
刀剣乱舞歌舞伎と両方見ると、こうも違う面白味があるのかと歌舞伎の懐の深さに感動です。新しい技術を取り入れ、スピード感があり、空間に壮大な絵を見せてくれるのが澤瀉屋です。笑っちゃうくらい降ったり飛んだりしているのもいつもどおり。
ネタバレになりますが、私的な見所をお話します。
ストーリーは追っていません。
大活躍の二人とダイナミックな演出のこと。
そうそう、これは知っていたかった!
仮名手本忠臣蔵の冒頭と同じ、口上人形が登場します。この声が團子くん!不覚にも初日はわかりませんでしたー!若い人の声だな。。と思ったものの、まさか出演していない團子くんだとは想像もしませんでした。これは知って聞いたほうがいいと思います。次回はしっかり聞いてこよう。
主人公、斧定九郎は中車さん。
これはもう体力の限界チャレンジですね。おそらく猿之助さんが演じていても大変そうなくらいの出番&立廻り&宙乗り。先月の吃又はお稽古期間がたっぷりあったと思います。でも今月は5月中旬まで猿之助さんがすることになっていましたから、そこからお稽古だったはず。
それを考えると心がキュッとなり、終始にわたって余裕がなさそうな中車さんに(初日ですから)心の中でずっと「頑張れ頑張れ」と言い続けてしまった。
もちろん、ぶっ返りや宙乗りをサポートするのは一門の皆様なので心配はしていません。初日なのにこういった演出部分は考えられないほどスムーズでした。
一幕目の浅野さんの登場でお客もふっと息が抜ける感じでした。真面目に演技をしているのに可笑しみがあるのがすごい。ここからお客との一体感が生まれていきました。何だかもう歌舞伎座に違和感ないです、はい。
で、切腹しちゃう。忠臣蔵のパロディ部分でもあります。そして、斧家に伝わる忍術が書いてある巻物を定九郎に託します。「忍術使える家なのかい!」と笑ってしまったけど(笑)
忍術を伝授された定九郎は「暁星五郎」と名乗り、塩谷家の家宝を取り戻す決意をし、塩冶に報いるためお家再興を目指します。中車さんは初役で主演という大役だけど、まわりは一緒にやってきた方たちですし、特に浅野さんとはとても落ち着いて芝居できているような安心感がありました。
幕切れにドカ雪(笑)尋常ではない量の雪が天井全体から落ちてくる。これは是非、見てほしい!圧巻でした。一階席1列目~2列目中央あたりは雪まみれ確定です。
ワンピースの時もそうだったけど、こうして幕切れに仕掛けを持ってきて、幕間を幸せな時間にしてくれるのが澤瀉屋の構成の巧みさ。幕が閉まっても、雪まみれの客席は大興奮のまま(笑)写真を撮ったり、雪を見に行ったり。こういう光景が懐かしい。
中車さんの星五郎(定九郎)は、仮名手本忠臣蔵ではほんの数分しか登場しない悪役キャラクター。父は塩冶浪士でありながら敵に内通している嫌われ者。その息子が定九郎で、討入には参加していないどころか殺されてしまう。しかもセリフは「五十両」しかありません。
それが今回の話では、忠義心を持っていて、父の汚名も晴らしたい塩冶家再興を願う良い人として活躍するのです。そして、無くなった家宝を探して取り戻そうと奮闘します。
一幕目のぶっ返りがダイナミック。二幕目 中車さんを芯にした’どんたっぽ’の立廻りは圧巻で、中車さんはじめお弟子さん方の浴衣姿が夏らしい。傘を使って車を作ったり、木の短めな腰掛(ベンチみたいな)で文字を作ったり。「中車」にちなんだ洒落た趣向になっています。留めはマッピングの花火!これが最高に素敵。それをバックに笑也さんが舞台上を翔んでいます。
今回は笑也さんが演じていますが、猿之助さんが子役の時に翔んだお役です。当時、お客の上ではないから本人が怒っていたというエピソードがあります。
中車さんの花道の引っ込みでは、BOSの山口さんのバク転もあるので花道が見えると面白いと思います。
また、もう一人、出演時間が長いのが歌之助くんの与五郎!最初は良い人なのだけど、自分が高野家の血筋と知ると悪の道に進んでしまう。どんどん変貌していく様が新境地でした。歌之助くんの色悪は初めてです。大胆で良いではないですか。成駒屋の自主公演の弁天もよかったから納得。
猿之助さんはこの作品で歌之助くんを世に出したかったのだろうなと伝わります。兄の福之助くんも大活躍ですが、遥かに上回る活躍です。悪人になればなるほど化粧も変わっていきます。
この作品をやりたい!と歌之助くんが猿之助さんに言ったことが上演のきっかけになったので、その歌之助くんに大役をやらせてあげたかったのかな。優しいな。千穐楽まで進化していきそう。見てほしかったです。
大詰は、この二人が対決することになります。
大凧に乗る中車さんの話は前回しました。観る側も手に汗握る光景は次回はどうなっているでしょうか。
中車さん×歌之助くん。大屋根の上の立廻りです。この大屋根が舞台からはみ出そうなくらい大きい(笑)わりと舞台の際まで屋根なので、客席まで瓦が飛んでいってました。
瓦と言っても柔らかい偽物です。これが尋常でない量の瓦。斜めになった屋根の上で二人は瓦を投げたり蹴散らしたりします。もちろん刀でも戦う。歌之助くんの身体能力が素晴らしく、飛び跳ねてるのですよ(笑)しかも高さがある!若い。かたや中車さんは必死です。これが猿之助さんでも辛いと思います。
足場は瓦まみれなので危険です。気を付けながらの立ち廻り。ヒヤヒヤ見ていると、ど真ん中から壱太郎さんの’おかる’が壁を打ち破って派手に登場してくるのにびっくり(笑)壱太郎さんは、かつて塩谷家に奉公していた女伊達・金笄(きんかんざし)のおかる。立廻りに参戦です。捕手もこれでもかという人数で圧巻です。
猿之助さんの代わりに藤間ご宗家が演出に加わりました。5月からよくぞここまでまとめてくださったと思う。猿之助さんが描いていたものとは少し違うのかもしれないけど、32年ぶりの作品ですし、もともとの仮チラシには「四幕」とありました。現在は「三幕」です。もしかしたら所作事(踊り)があったのかなと想像します。
でも今月も痛いほど感じます。夏らしくて楽しくて、お祭りのような派手な芝居。お客さんに楽しんでほしいという想い。心がそこにはありました。
おおらかさ全開の澤瀉屋の夏芝居でした。
長くなってしまったので、ストーリーやお弟子さん方のことはゆっくりお話していきます。一門の皆様が舞台にいてくれて嬉しかったです。
aya
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