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今年の猿之助さん Ⅰ

今年もあと数日になりました。

猿之助さんの振り返りをしてみようかと思います。こうして一年を書けることが感謝です。まだ歌舞伎公演の一座は本格的に全国に行くことができません。東京は恵まれています。猿之助さんはほとんど歌舞伎座に出演でした。

今年1月2日の歌舞伎座初日が初芝居でした。
前の月まで四部制だったのが三部制に進化。浅草歌舞伎中止のため、浅草メンバー(若手の役者)の一幕が設けられました。猿之助さんはお家芸の舞踊「悪太郎」で登場。初めて拝見したのは亀治郎時代の浅草歌舞伎です。女方が主だったので違和感がありましたが、それが嘘のように板につきました(笑)初芝居から笑わせてもらい楽しい年明けでした。

2月~3月は杉原邦生さん演出の「薮原検校」に出演。私は東京公演のPARCO劇場で観劇しました。もうこれは圧巻でした!今でも観たい!あんな猿之助さんこんな猿之助さん。。どこまで行っても悪。歌舞伎では観ること叶わない芝居に興奮しました。

「早物語」の場面は衝撃的でした。
座頭の杉の市が早物語という’滑稽な話を早口で語る’芸を披露する場面。猿之助さんは扇子で講談の張扇のように調子を取り、だんだんと熱を帯びて、義太夫風、お能風、しまいにはギターに乗り、ギアチェンジを繰り返しながら、長丁場を早口で語りまくります。

いつも思うけど、こういう語りの場面は絶対に噛まないからすごい。以前、話していたけど、リズムで覚えているのだろうなぁと。千穐楽には自分の芸のようになってた(笑)もう、神!本人は嫌がると思うけど、もう一回聞きたいです。

それと、ビジュアルで印象に残っているのが、川平さんの声量ある伸びやかな歌声と、その歌に気持ち良さそうにのり、客席に背を向け無言でたっぷりと舞台奥にはけていくシーン。

舞台奥から猿之助さんにライトが当たり、光の中へ歩いて行くようでした。どこを切り取っても絵になるお姿。間の持たせ方が心憎い。歌舞伎の底力を感じました。歌舞伎でない舞台でも、時代物では歌舞伎役者である自分を存分に発揮する猿之助さんを観るのが楽しいです。

4月は歌舞伎座に戻ってきました。お家芸の舞踊「小鍛冶」
久しぶりの従兄弟共演でした。しかも舞踊なので、経験が浅い中車さんはハードルが高いだろうなとドキドキしました。が、全くそんなことはなく、むしろ息がぴったりでびっくりしました。

猿之助さんの稲荷明神、中車さんの三條小鍛冶宗近。名刀、小狐丸を打つ様子が千穐楽近くではテンポアップしていて攻めていました。猿之助さんの金歯も話題になりましたね。狐の振りで踊る時はスイッチが入ったように巧みでワクワクしました。

この演目は先代の時までは文楽座の語りと演奏でした。今回は竹本連中が担当でしたが、変わらず太夫が語ることに猿之助さんが決めたとか。葵太夫と愛太夫の掛け合いをたっぷり楽しめ、贅沢な一幕でした。

この公演は残念ながら24日に突然の千穐楽。猿之助さんはSNSで「役者人生で一番めでたくない千穐楽」と発信し、私たちと思いを共有してくれ救われました。

ここからまたしばらく休演状態になり、5月の初日も延期になりました。そんな中、6月にかかる新作歌舞伎「日蓮」は大丈夫だろうか。。と心配に。

次回は日蓮、そして猿之助さんが休演して復帰した岩藤のお話です。


aya

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