見出し画像

帰ってきた平成中村座 1

私はこの芝居小屋が大好きです。

10月から二か月連続で行われている平成中村座公演。現在、浅草浅草寺横に江戸時代の芝居小屋が再現され出現しています。サイズも同じだそう。

初めて中に入ったのは2008年でした。歌舞伎を観始めの頃。靴を脱いで一歩入ると、江戸時代にタイムスリップしたような感覚にワクワクが止まりませんでした。小屋が「楽しんでいってー!」と言ってくれているよう。不便さえも面白い。狭さも役者さんとの。。というより芝居と距離が近いことに興奮したのでした。

当時、勘三郎さんは仮名手本忠臣蔵をA~Dの4つのプログラムに分けて上演していました。歌舞伎で初めて観る忠臣蔵に夢中になり、毎週違うプログラムを観に足を運びました。冒頭の「大序」を勘三郎さんが復活させたのもこの時で、その様式美に虜になりました。

勘三郎さんを最後に楽しんだのも平成中村座でした。「髪結新三」最高にかっこよかったです。中村屋贔屓でなくとも、小屋に入ると勘三郎さんの思い出が心に甦り、今でもふっと声が聞こえてくるような気がします。

その平成中村座が4年ぶりに浅草に帰ってきました。

先月は第二部、今月は第一部を楽しみました。第二部は二か月通して宮藤官九郎さんの新作歌舞伎「唐茄子屋」が、月で一部部分のキャストを変えてかかっています。落語「唐茄子屋政談」をもとにしたファンタジー!?勘九郎さん七之助さんはもちろん、勘太郎くん長三郎くんが大活躍です。

副題に「不思議国之若旦那」とあるように、不思議の国のアリス要素も取り入れ、小さい若旦那も登場するという(笑)クドカンぽいのか語れないけど、出演している荒川良々さんの存在自体がクドカンぽいなと。役者さんが近いから、良々さんが大きくてびっくり。そして、上手い!まくしたてるセリフは聞き取れるし、何より小屋に馴染んでる。でも染まり過ぎていないところが絶妙でした。

後方で見ていたのですが、勘太郎くんが揚幕からひょっこり顔を出した時に驚きました。白塗りのお顔が勘三郎さんかと思うくらい似ていました。ああ。。勘三郎さんもここにいるのだと感じました。

勘太郎くん長三郎くん、それぞれに立廻りの見せ場があり盛り上がりました。二人とも大人顔負けに見せてくれるではないですか!進化し続ける二人の今後が楽しみです。

先月は獅童さんが出演していました。超歌舞伎か!?と思うくらいの煽りは小屋も楽しい。小屋で見るとより一体感があり全員が巻き込まれて参加しちゃう。それにしても獅童さんの大工の拵えが粋でかっこいい。浮世絵から抜け出たようなスッキリした男前姿に惚れ惚れしました。

彌十郎さん片岡亀蔵さん、扇雀さん。安定の中村座メンバーが脇を固める中、際立った虎之介さん(笑)明るさを持った役者さんだなぁと思っていました。その陽の部分がこんなにも活きて面白くなるなんて。今回、一番の成長株なのではないでしょうか。何よりご本人が楽しそうなのが伝わり、こちらもウキウキしてしまった。

ジェットコースター感覚でスピーディにテンポよく進み、約2時間が長く感じませんでした。客席が広いとは言えない環境なので辛いと想像していたけど大丈夫でした。今月は獅童さんのお役は橋之助さん。全く想像できない(笑)成駒屋兄弟が加わったversionも観てみたかったな。それに新作は進化します。今月はだいぶ変わっているのではないでしょうか。

私はクドカンではあまり笑えないのですが(笑)今回はけっこう笑うことができました。中村屋の力はすごい。小屋の雰囲気、サイズにぴったりな芝居だとも思いました。感染予防対策が無い時代であれば、もっとお客を巻き込んでやれたのかとも想像して、また観てみたいと思う。そして、何度観ても、舞台奥が開き、浅草の町と一体になる絵は最高にエキサイティング。これは一度、体感してほしいです。

先月の第二部はもう一つ、35年ぶりの上演「綾の鼓」という有吉佐和子さんの作品が並びました。主演の虎之介くんが本当によかった。主役を演じるのを初めて観ましたが、華があり、憂いもあり。清々しい陽の雰囲気が、しっとりしたストーリーを暗くせず、私は好きでした。

鶴松さんの女方も存在感ありました。虎之介くんと若い二人がこうして頑張る姿は中村座ならではだと思うので楽しかったです。そこを扇雀さんがグッと締めて素敵でした。ゆったり観ることができるのは、唐茄子屋と対局で面白かったです。


クドカンと有吉佐和子さんの二人の作者が並び、面白い組み合わせでした。歌舞伎の古典でも舞踊でもない。小屋にあっているチョイスだとも思いました。でも。。これを観てしまうとthe・歌舞伎も観てみたくなるのがファンの性ですね(笑)

現在上演中の第一部、勘九郎さんの「魚屋宗五郎」は心震えました。これこそ芝居小屋で観たほうがいい演目かと。そのお話は次回に。

客席後方から
小屋入口

aya





この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?