一世一代まで。
初日に拝見した「四の切」が忘れられず余韻に浸っています。
疫病流行る中、こうして猿之助さんが大怪我からの完全復活を果たしたことが本当に嬉しい。観劇中は無我夢中であっという間でした。
ものすごく狐忠信の雰囲気が変わったなぁと感じていて、それは具体的にどこなのだろうと思いを巡らせていました。
前回の上演から5年半が経ちました。前の文章に書いたとおり、その間にあった怪我や、疫病流行での公演中止など。。経験も大きいと思う。私だって変わりました。観る側の心の変化もあると思います。
2010年に猿之助さんが亀治郎時代に初役で演じた初日から今日まで。私の日記にある狐忠信の感想を全て読み返してみました。公演全部を観ているわけではありません。三分の二くらいの公演は拝見してきたようです、私。
2012年6月からの2年以上に及ぶ四代目猿之助の襲名披露公演には、巡業も含め、ほぼ「四の切」がかかっています。
亀治郎時代の2回の上演を経て襲名公演が始まった時は「狐がちょっぴり大人びた」(笑)、2年以上かけた襲名興行の大千穐楽では「四代目猿之助のお披露目として全国をまわり、いつしか’猿之助’になっていた」と。
前回の2016年6月の歌舞伎座の時は「やっぱり変わったと思う。いつの間にか歌舞伎座の真ん中にいる役者さんになっていた」
狐詞(きつねことば)も毎回のように違う印象を持っていました。
ご本人は意識しているのかわかりませんが。今月はそこが印象が違う一つかと思うのです。この10年少しづつ誇張して聞こえなくなっているのですよね。最初の頃は、わりと’笑い’が起きていた記憶です。今月は今までで一番自然な狐詞でした。その可愛らしさにクスっとなるけど、笑いではなかった。
けっして地味になっているのではありません。猿之助さんが子狐の心になっているから。言い回しが違和感なくなっているのです。全てのケレンも子狐だからこそ、なのです。優しく、可愛らしい、少しナイーブな。。四代目らしい狐忠信かと。
前半の本物の佐藤忠信(子狐が忠信に化けているのが後半)が秀逸だからだとも思うのです。私が「忠信が変わった」と思ったのはやはり襲名興行ラストの巡業あたり。出を観て、これは!!!となりました(笑)本物による本物の所作と生真面目な雰囲気、あのトキメク引っ込み!全部が素敵だけど、特に出と引っ込みは何回でも観たいです。
これがあっての後半なのだと、この時に気づかせてもらいました。今回はさらにパワーアップし、めちゃめちゃかっこいいです。
自分の感想を読んで気づきました。一人の役者さんが一つのお役を務め続けるということ。私自身が、今一番多く観ている猿之助さんのお役が’狐忠信’と’黒塚の岩手’です。歌舞伎ファンの先輩方が仰っていることが少しわかるようになってきたなと思う。
見続ける楽しさ。夢に夢を重ねる楽しさ。
役と人生が繋がり、思い出を宝物にしていく楽しさ。
これを知ることができたのは猿之助さんのおかげです。
「四の切」を観ると心が明るくなります。
帰り道、心がホカホカする感じ。子狐の幸せそうな顔がいつまでも余韻に残ります。この感触はこの演目だけです。
「一世一代」として演じ納めるまで、観ること叶ったら幸せです。
aya
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