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澤瀉屋の演目を繋げること

久しぶりにTVをつけて隅田川花火大会を楽しみました。ゲストの隼人さんは浴衣姿がさすがに際立って素敵です。各地で4年ぶりの花火大会が行われて嬉しいです。ま、私はもっぱらTVで鑑賞です。人混みが苦手なので。

花火と言えば歌舞伎座「菊宴月白浪」。舞台一面が夜空になり、現代の映像技術で大輪の花火が打ち上がりました。音もリアルだったので、お客からは歓声があがっていて夏らしい光景でした。

昨日28日が千穐楽。おめでとうございます。一か月間無事に上演できたことに感動しています。三代目猿之助の頃、7月と言えば「猿之助奮闘公演」の月でした。その月に父と同じお役で歌舞伎座に立った中車さんはどんな思いでしょうか。

一か月間ほぼ毎日演じるということは、人をこんなにも変えてしまうものなのかと思いました。年齢は関係ないですね。でも、それは中車さんの演じることへの貪欲さ、攻める姿勢がそうさせたのかと感じます。

私は26日に見納めてきました。
そのお話を聞いてください。


この日は3回目の菊宴月白浪。友人知人と4人で観劇しました。一人は今年に入ってから歌舞伎を観るようになり、澤瀉屋は5月明治座夜の部を観たので2回目という大学生。忠臣蔵を全く知らない。それでもすっごく楽しんでいたのですよ。私からは最初に、高野家塩冶家の対立をちょっぴり話しただけ。あとは彼女から質問してきたことに答えました。

お守りのこと、双子の説明などを求められた(笑)彼女は全部を把握していたわけではないと思う。けど、笑ったり、花火に驚いたり、宙乗りにキャッキャしたりしていました。

あああ、猿之助さんに伝えたいな。

若い子にも届く面白さなのですよ、と。やりたいと言った歌之助くんは見事な進化を遂げて、ラストの立廻りは力の限りを見せてくれました。これからの彼の人生に大きな影響を与える一作になったと思います。

きっと歌之助くんが一番に猿之助さんと共演したかったはず。5月後半「不死鳥よ~」で毎回のように泣いていたのを思い出します。今月は笑顔でやり切ってくれてよかったです。

私が観た26日は、後半の色悪の部分は本当に楽しそうでした。こういう感じが大好き。楽しそうに演じてくれると、こちらも楽しくなっちゃう。再演の時はまた演じてほしい。


進化と言えば中車さんです。この日はお顔からして違ったのです。化粧が薄塗になったのか?眉なのか?表情なのか?初日に見たガチガチな感じが溶け、ちょっぴり余裕も見えて、何より本人らしさが出てきてびっくり。とはいえ、香川照之ではないのです。市川中車なのです。

また、以前より猿之助さんを彷彿とさせる瞬間が多くなってた。やっぱり側で観ていたんだなと思わせる。花道を引っ込む時の顔、キマる形の腕の角度というかなんというか(笑)、ぶっ返りの思い切り方。。。ホント、ふとした瞬間。

でも全く違うところもある。やっぱり宙乗りは違う。そして、目。目の表情が違う。猿之助さんのほうが三代目に似ていてクール(三代目猿之助時代は映像しか見たことがありませんが)、でも猿之助さんのほうが奥に優しさが見える。中車さんは、常に目に表情があるイメージなんです。これはやはり映像の人だからなのか。。勝手な妄想ですけど。

そして、この方が幼い頃から歌舞伎と日本舞踊をやっていたらどんな役者だったのかと思ってしまった。このことは今まで考えたことがなかったし、考えても仕方ないことだし、浮かんでこなかった。それが初めて心に湧いてきたのです。

猿之助さんが不在の期間、もしかしたら中車さんは化けていくかもしれない。そうなったら猿之助さんと共演が楽しみで仕方ありません。


歌之助くん中車さんだけでなく、全員が進化していました。福之助くんの演技も大人になっていた。どっしりして安定感があって、思わず目がいっちゃう役者さんになったと思う。

全体の芝居がテンポアップして緩急ついて澤瀉屋らしくなっていました。だからこそ思うのが、猿之助さんが演出をしていたら。。ということ。

これは3回目にしてものすごく気になりました。舞台転換の間が多いのです。芝居のテンポが良くなった分、目立っていたと思う。

幕が閉まって太鼓の音で間を繋ぐ。。猿之助さんであれば多様しなかったのでは?と考えます。廻り舞台も活かされていなかったように感じます。花道で段之さん方が話して繋ぐ場面があっても、前後の間がよくなかったような。流れが止まってしまうのですよね。

私の記憶が正しければ。。三代目の頃の芝居と、四代目が進化させた部分の一つがそこだったと思うのです。今月は上演時間が5分早まりましたが、舞台転換がもう少しスムーズであればあと数分は縮まっていたかと。


役者さんたちにも細かなダメ出しやアドバイスもしただろうから、違うことになっていたかもしれないと思ってしまう。ああ。。でもこれは後のお楽しみにとっておきます。四代目Versionをいつか実現させてほしいです。


お客の入りもよくて一安心です。演目を変えずに上演してくださり感謝です。無事に来月にバトンが渡ります。続けて澤瀉屋の演目がかかるのは心から嬉しい。当たり前のことなんて一つも無いのですよね。

現在、10月の立川立飛歌舞伎まで澤瀉屋の演目が決定していますが、その先は有るかもしれないし無いかもしれない。だから観ない選択は無い。でもこれらが盛り上がれば澤瀉屋の演目が続くかもしれないと希望を持ちたい。主演は他の家の方でもいい。一門の皆様がバラバラにならずにお家芸で観る環境が続きますよう願います。


終演後、4人で「楽しかったねー」と笑顔。この余韻が澤瀉屋なんだな。嬉しい余韻でした。


7月の歌舞伎も楽しませていただきました。
来月は「研の會」からスタートして歌舞伎座「納涼歌舞伎」を定額制パスポートで楽しみます。


aya


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