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猿之助さんの女團七

前回のnoteで愛之助さんの団七のことを書いていたら、猿之助さんが演じた「夏姿女團七」が心に甦ってきました。

2014年秋、「市川猿之助連続奮闘公演」の二か月目にかかりました。前年の「坂東竹三郎の会」で演じて評判になり、本公演で上演が叶いました。

相手役が竹三郎さんでないとやらない!という猿之助さんの希望どおり、義母おとら役を竹三郎さんが演じました。

夏祭浪花鑑の男女逆転Version。この時、56年ぶりに本興行でかかったとか。竹三郎さんお墨付きの猿之助さんのお梶に大興奮でした。

2014年当時の私の日記で興奮を感じていただけると嬉しいです。

三つ目は奮闘公演大千穐楽の記録です。


11月5日 女團七


昼の部の’お梶’の体のラインがなんといっても摩訶不思議でした。いつものことながら猿之助さんの女方の妙に魅せられました。濡れて着物が体にまとわりついても体が色っぽい。

何だか艶っぽくて。私、間近で観たから興奮しすぎて
頭で美化しちゃっているのかもしれません。

ラストの泥場は、濡れても濡れても美しい。でもこれは女方だからかな。女性美が際立つように思います。

前半のお梶が粋な女伊達であればこそ、人の弱さというか、女性の弱さが引き立ちラストが艶っぽいのです。

以前、浅草歌舞伎で「黒手組助六」時の水の中で隠れるという場面。水も滴るいい男だったのを思い出しました。女方で濡れた姿が初めてだったのでショッキングでした。

それに対して竹三郎さんは、どんどん醜くなっていきます。イビリ方が凄まじくて、猿之助さんが耐えている細かな表情がいじらしい。

お客も最初こそ笑いがあるのですが、だんだん緊張感が走り息をのむ感じになっていきました。

竹三郎さんはおかしみもありつつ、陰険で強欲。粘っこくもあり、冷酷でもありました。男性バージョンよりこちらの方が怖い(笑)

狂気になる瞬間。。ここが人間の切ないところ。
やはり継母殺しをしてしまった罪は罪。

花道で手を合わせた猿之助さんの表情に涙しました。

駆けていくお梶の後ろ姿を揚幕が閉まるまで観続けました。花道の向こうには幸せなんてないだろうに。何とも言えない余韻でした。

次に拝見する時はどんなふうに感じるのか楽しみです。
もっと進化しているはず。

11月11日 新たな景色

今日、上手から見たら、猿之助さんの知らなかった表情がたくさんあるのを発見しました。

春猿さんとの立廻りの時、竹三郎さんと対峙する時、花道で他の役者さんが演技している時。

涼やかだったり、してやったり顔だったり、燃えるようだったり。。私はまたまた釘づけでした。

そして、本雨の中の猿之助さんの美しいこと。舞台を引きで観るからこその感動でした。キマる形の全てがカッコいい。
特に井戸のところで刀を上げて片足で立った瞬間は私の体の中を血が駆け巡りました。改めて歌舞伎ってすごいと思いました。

とどめを刺すところなんて、すごく気持ちが入っていて怖いけど魅力的でした。

ラストは前回とちょっと違うことを感じました。刀で身だしなみを整えた時の’笑み’が印象的。女性って怖い。

また、粋で勝気で真っ直ぐなお梶だけど、’憂い’を感じました。この憂いは猿之助さんの魅力なのだと心底想います。

夏祭りの神輿が通る際、猿之助さんは酔っ払いから腰の手拭いを抜き取ります。キレのいい動き、ちょっとした時の鮮やかさ。是非、注目していただきたいです。

お芝居は進化しています。
昼の部のチケットを追加してしまいました。

11月25日 猿之助連続奮闘公演大千穐楽!

千穐楽おめでとうございます!
役者の皆さん、ちょいちょい千穐楽ネタで攻めてきます。

猿之助さんのお梶の濡れ方は拝見した中で一番すごい(笑)
殺意が生まれる瞬間、鳥肌が立ちました。殺気がまわりを支配します。それは、やはり竹三郎さんがいつもに増して憎々しかったから。

猿三郎さんが台詞でおっしゃっていましたが、このお二人でないとこうはいかないと思います。

またいつか拝見したいです。2か月間でお梶が一番好きでした。

夜の部は花道横でした。頭上を蜘蛛の糸が飛ぶ美しさを堪能。真下から見るとこんなに綺麗だったのですね。猿之助さんの飛ばし方も上手いと思いますが、糸を作る職人さんにも感動です。

やはり男夜鷹のシーンは爆笑でした。どうやら弘太郎さんの鼻毛が出ていたようで(笑)猿弥さん竹三郎さん、花道から笑いが止まらず。猿弥さんツボだったみたいでずっと引きずってました。

寿猿さん「えーと」って大きな声で言っちゃうから(笑)さすがの猿之助さんもこらえられず後ろを向いちゃった。同じタイミングで竹三郎さんも吹きだして、一瞬後ろに引っ込んじゃった!

さらに寿猿さんの花道の引っ込みは大爆笑。あんなに踊ってましたっけ?(後日、猿之助さんのイタズラで曲が変わっていたことが判明。寿猿さんはなんなくクリアでした)

見たら、竹三郎さんが猿之助さんの側でしゃがんでいて、
仲良く二人でめちゃめちゃ笑ってました。

猿之助さんの袈裟懸けに斬る姿にしびれ、土蜘蛛の姿でこれでもかとジャンプする気合に泣きました。そして、大立廻りでの必死の表情。もう泣けて泣けて。

どうしてあそこまでできるのでしょう。胸がいっぱいになりました。ラストは拍手が止まりませんでした。

最初はお弟子さんたちも登場。

團子ちゃんは、蜘蛛の糸を仕込み、飛ばしたけど片手失敗しちゃった。でもそれが可愛らしくてみんな笑顔。本人は悔しがっていて頼もしい限り。素顔を見ると、もう大人の顔でした。

いったん幕が閉まるけど手拍子が続き幕が上がります。
亀三郎さん尾上右近さん猿弥さん團子ちゃん、そして猿之助さん。大拍手に応えながらみんなで花道へ。

猿之助さんのお顔はホッとしていました。そしてお客の想いを受け止め、胸にしまっていました。いつもの仕草。

無事に幕が下りて本当によかった。2か月間、お疲れ様でした。寂しいけど、終わりは始まり。生きる力をいただき、また明日から新たにスタートです。思い出を有難うございます。

aya


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