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菊宴月白浪 第一幕の話

先日、Radio番組「問わず語りの神田伯山」で、伯山さんが歌舞伎座で「菊宴月白浪」を観劇した感想をしゃべっていました。これが面白かった。伯山さんのRadioをご存知の方はイメージできると思うけど、毒舌な中にも愛情たっぷりに、中車さんの話、澤瀉屋の話をしてくれた。

猿之助さんのファンとして嬉しかったし有難かったです。中車さんが25歳くらいの時に猿翁さんと初めて対面した時の話は有名ですが、まるで講談のように語ってくれ、電車の中で涙してしまった。私も芝居を観ながら中車さんの背景に想いを馳せていたところでした。そして、伯山さんの「役者の生き様にもお金を払っているんだ」という感覚に共感しました。

さて、中車さんの進化のお話は前回しました。今回は支える皆様のことを聞いてください。


二回目の今回はイヤホンガイドを借りてみました。一度観ていたこともありますが相当わかりやすかったです。ただ、忠臣蔵を知らない友人は、パロディの説明もわからないから少し混乱したと言っていました。

外題の由来などなど、へー!ということがけっこうあるので今回はお勧めです。


忠臣蔵のお話で不義士と言われる斧定九郎が、実は忠臣者だったという180度視点を変えて主人公に仕立て、塩冶家再興のために忍術(妖術?)が使える大盗賊になるという設定にした鶴屋南北。これを三代目猿之助が復活させてリニューアルし、澤瀉屋のお家芸となりました。

幕開きは「大序」のパロディ。口上人形の語りが終わると役者たちに魂が入り動き出します。時は討入から一年後。塩冶家、高野家ともにお家再興のために、それぞれの家宝を差し出そうとする泉岳寺の場面が始まります。この二つの家宝がラストまでいろんな人の手に渡っていくことになります。

全体的に、塩冶側、高野側か分かったほうがスッキリします。そこを掴みながら観劇するのがおススメです。

塩冶判官の弟、縫之助は種之助さん。
高野師直の養子、師泰は青虎さん。

種之助さんはスッキリした二枚目。青虎さんは高野師直を彷彿とさせるふてぶてしさです。

で、あるあるなのですが、二枚目縫之助に会いに、高野家腰元の浮橋がやってくる。ロミオ&ジュリエット状態です。そして逢瀬の間に家宝の短刀がすり替えられてしまう(笑)勘平&おかるのエピソードのよう。

偽物を差し出してしまったことで切腹をしようとする縫之助を止めたのが元塩冶家家臣の定九郎でした。自分が身代わりになると言い、ある考えから、父、九郎兵衛の家で切腹することになりました。

九郎兵衛は浅野和之さん。猿之助さんが浅野さんをキャスティングしたのは観たら納得です。まあ、親子役をやりたかっただけかもしれないけど(笑)初日は唯一と言っていいほど中車さんが安心しているように見えました。二回目は二人の芝居が濃密になっていてびっくり。親子であればこその’思いやり’がリアル。父への定九郎の愛に驚くし、息子を褒めたたえる父の優しさも感動。

仮名手本の二人を思い出すと天と地の差。考えてみれば、斧家にも関わる人はたくさんいるわけで。。こんなふうに描かれるのを見たら心が晴れるだろうなと思いました。


切腹するのは父の浅野さん。ここは判官切腹のパロディですね。息子の定九郎は切腹を見届けに来た高野家側の人たちを斬り、父を切腹させて不義士の汚名を払拭させようとしたのです。それを察した父は喜びます。

浅野さんの出番はここまでです。初日は、え!と思ったけど、父から斧家に伝わる忍術の巻物をもらうことが、第二の発端のシーンになるので重要な役どころ。

忍術を使えるようになった定九郎は「暁星五郎」と名を変えて盗賊となり、塩冶家家宝「花筐短刀」、高野家家宝「菅家の正筆」を手に入れ塩冶家再興を目指すことになります。

まずは「菅家の正筆」を奪いに、納められた山名次郎左衛門の家を仲間と襲います。

星五郎の仲間の筆頭に、毛利小源太役の福之助くんがいます。毛利小平太のことだと思うのですが。。この人は討入寸前で連判から抜けた人。斧家に出入りをしていてもおかしくありません。福之助くんは安定感があります。澤瀉屋の芝居が体に沁みついている感じ。頼もしい。

山名家を襲う場面が討入のパロディ。雪の中、大勢での立ち廻り。しかも竹森喜多八と小林平八郎の激しい立廻りと同じシーンがあります。

福之助くんと猿四郎さんが戦うのです。これは観る側も燃えます!かつぎを被った人が現れると俄然テンション上がりました(笑)激しいのくる!!となる。誰なの~と思ったら猿四郎さんでびっくりしました。かっこいいに決まってる。初日よりスピードアップし、福之助くんはダイナミックさが増してる。

以前、オグリの時に隼人さんにも殺陣を教わったと言っていたのが納得です。腕の振りが大きい。速くてダイナミックな振りに興奮しました。


星五郎(定九郎)は忍術を使って「菅家の正筆」を奪うことに成功します。ラストは舞台天井から尋常でないほど雪が降る(笑)一階席前方が雪まみれです。あ、でもワンピースの時ほどではありません。これにはお客が湧きました。幕間になってもどよめきが続くのが澤瀉屋。でしょでしょ、と誇らしくなっちゃう。楽しませることに命がけなのです。


この幕間がお弁当タイムです。新緞帳を眺めながら美味しくいただきました。

二階ロビーには夜の部「め組の喧嘩」にちなんで出演者の手描きの絵馬が飾ってあります。ほんの一部ですが写真に納めてきました。元気がでますよ。

お話の続きはまた次回に。

aya


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