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天一坊大岡政談 ふたたび

初夏のような日差しでした。

初日以来の第一部「天一坊大岡政談」を観てきました!

最近感じるのですが、30分の幕間の過ごし方が皆さん上手になったように思います。お天気がよければ劇場の外へ出るだけでも気分転換できるし、外からしか行けない一階売店や地下の木挽町広場で買い物をしたり。けっこう余裕でお席に戻れます。花篭で食事をなさる方もたくさんお見かけするようになりました。

それと同時に客席やロビーで話している方は、ほぼいない状態がキープされています。これは再開後から今も続いている案内係さんの努力の賜物だと思います。小団体の方も、来場時は盛り上がって話す人がいても、あのプラカードを見ると雰囲気を察して静かになっている人が多いように思います。あくまでも私の観劇時の感想ですが、やはり歌舞伎座はすごいなと感じています。

さて、お芝居は進化していました。

序幕は猿之助さんの場面です。坊主の法澤が老婆のお三を殺害するまで。初日より可愛らしいというか、可笑し味があるというか、猿之助さん独特な愛嬌のある法澤になっていました。囲炉裏に素足を向けて温めるシーンは、あんなに足指が自由に動くなんて(笑)全体的に分かりやすくなったし、細かい動きが増えていました。

将軍のご落胤であるという証の品を見せられ、ふと湧いてくる悪。人間は誰しもそういう部分があると思っています。でも、例え悪いことが浮かんでも、それを理性で止めて本当に実行しようと思う人はそういないと信じています。

法澤は自然と、それが楽しいことのように実行してしまう。そう見える猿之助さんが怖い。見た目に可笑し味が増せば増すほど怖いのです。怖いけど、その可笑し味の中に’救い’があるのも、すごいといつも思います。

二幕目で愛之助さん演じる伊賀亮と対峙するところは、やはり二人が並んでいること自体が嬉しい。昔、浅草歌舞伎では二人が引っ張っていた時期もあり思い出します。愛之助さんは人間味が増したように思いました。知的で冷静で。それは変わらないけど、何だか人としての温かみを感じるというか。猿之助さんのご落胤ぶった高尚なふるまいと、法澤の田舎者の態度の緩急が大きくなって面白かったです。

先日、対談番組で田中泯さんが、役作りは体から入ると言っていたのを思いました。その役はどんな体をしているのだろうと考えるそうです。

猿之助さんはそう考えてはいないと思います。でも泯さん的に観ると、法澤の時と天一坊の時と姿勢が全く違うのですよね。手足の位置、肩の位置、背筋。。序幕とは全く違う猿之助さんがいるし、二幕目で切り替わる時は声やしゃべり方だけではないのがわかります。

三幕目から松緑さんの大岡越前が加わります。松緑さんの進化がすごかったです。動きは少ない役ですが、大詰に向けて言葉で盛り上げる盛り上げる!お客がそのたびに拍手を送っていました。

愛之助さんが松緑さんをやり込めた時の、悪二人の得意気なこと!たっぷりと勝ち誇った様子も二人それぞれで面白かったです。

ラストの大岡越前が天一坊をやり込める場面の気持ちいいこと!猿之助ファンとしては複雑ですが、これはもう仕方ないと思える(笑)

巳之助さん演じる久助が登場してから急展開。天一坊に徐々にダメージを与え、そのたびに猿之助天一坊が作り上げてきたものにヒビが入る。松緑さんは畳み掛けるようにそこを攻撃する。このバトルがテンポアップして白熱していて面白かったです。

スカッと気持ちいい余韻です。テンポアップしていたので2~3分早まっていました。手の内がわかる同世代らしく、響き合っているのが楽しかったです。若手や澤瀉屋一門の皆様などなど、チーム感も出てきたのも気持ちよかった。

そうそう、猿之助さんが手拭いを頭に乗せて両端をクルクルして、喧嘩かぶり?みたくするのが、ものすごく手際がよくて惚れ惚れしました。注目してみてください。

明日。。もう今日ですが、猿之助さんの今月のもう一つの公演「森の石松」の初日です。初日は伺えませんが何回か観劇するので楽しみです。詳細は下記のTwitterをどうぞ。

aya


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