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◆ウィーンでタンゴ②勇気の出しどころ


①を読んでない方はこちらをどうぞ。

目指すミロンガは「Milonga EL FIRULETE」。

Google Mapを頼りに、サイトに載っていた住所へと向かう。賑やかな大通りから小路へ入ると、人通りもまばらで夜道は暗い。

ちょっと……いやけっこう怖い。
目的の住所付近に到着したものの、なかなかそれらしき会場が見つからない。

「この建物かな?」と思った建物の入り口には、ドイツ語の張り紙……
(もしやミロンガ会場は移動したというお知らせ?)

えーんわかんないよーーー。

このまま辿りつけないのかも。
せっかく勇気を出したのに。

と思ったそのとき、中年の女性2人組が通り過ぎ、私が立ちすくんでいた隣の建物に談笑しながら入っていった。

ミロンガの看板も何もない、石造りの堅固な建物。
その人たちが入っていかなければ、通り過ぎてしまっていただろう。

おそるおそる階段を上がっていくと、聞き慣れた、そしてウィーンの街には少し異質に聞こえる音楽が耳に入ってきた。タンゴだ!

重いドアを開けると、まず右手にコートなどをかけるスペースがあり、正面にはバーカウンター、その背後は洗面所となっていた。
フロアはバーを通り過ぎて奥の広間で、すでに何組かのペアが踊っていた。

システムがわからないので、とりあえずコートをかけ、トイレでタンゴシューズに履き替える。
ロッカールームはなさそう。大した貴重品は持ってこななかったけれど、リスク分散のため現金はハンドバッグへ、クレジットカードはコートのポケットに分けて入れた。

バーカウンターにいた女性が、親しげに話しかけてくれる。入場料の10€を払うと、ドリンクチケットらしき番号の書かれた黄色い紙を渡された。

早速それで白ワインをもらう。
まぁまぁ美味しく、元気が出てきた。さすがワイン大国オーストリア。

広々としたフロアに入ると、四方に椅子が並べられている。白い壁には絵画がかかっており、クラシカルな雰囲気だ。
入り口から入って左手に一段高くなったスペースにはテーブル席がいくつかあった。Reserve席かな、と思いそちらにはいかず、入り口あたりの椅子にちょこんと腰を下ろす。

まずは様子を見よう。不安すぎるぜ。

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到着したのが21:45ごろ。ミロンガの開始時間が21:30だったので、人もまだ少ない。

その場にいるのは欧米人ばかりで、ほとんどが50〜60代以降のように見える。のっぺり顔の乱入者はかなり浮いていることだろう。

少し好奇の目を感じたものの、だからといって嫌な扱いを受けることもない。同時に、構われることもない。

皆、マイペースに気持ちよく踊っている。なんというか、ギラギラとした雰囲気がないのだ。
華麗な足さばきなどテクニックで目を引く人も何人かいたけれど、ほとんどの人は、ゆったりと抱擁を楽しんでいるように見えた。

ただ……あの人と踊りたい!と思える人が、あまりいない。
そもそもカップル来ている人も多いから、カべセオもしにくい感じ。
(そんな勇気はないが)

うーん、今日は踊れないかも、踊りにくい感じかも。
それにまだ緊張が解けなくて、どうしてもうつむきがちになってしまう。

ちらちらとフロアと窺い見ながらワインを飲むこと30分。

いや、ここで1タンダも踊らないでスゴスゴ帰ったら女が廃る!

ついに勇気を奮い立たせ、動くことにした。
先ほどからなんとなく視線を感じていた、テーブル席に座っている顔の濃いヒゲのおじさんの方を見据える。

相手はすぐに気づいて首を傾けてきた。
ニコッと返すと、近づいてきた!

わ、いよいよだ!
ヒゲのおじさんが海外初のお相手なのね。

いやーん緊張する。

曲はなんだったか忘れたけど、嫌いじゃないタンゴの曲だった。
↑それまでの30分間はよくわからないクラシックな曲で、全然踊りたいと思わなかった(失礼)。このタンダなら良いかも、と思った曲がかかったので目を合わせたのだった。

その方とのタンダは……
うーん。
けっこうパワーリードで、ちょっと振り回されちゃった、かな。あと相手の背が高すぎてバランスが悪く、途中から首が痛くなってしまった。「この人なんか鼻息荒いなぁ……」などと冷静に考えながら1タンダ終了。

それを皮切りに緊張が溶けてきて、ワインももう1杯追加(別料金)。

ようし、ウィーンの夜はこれからだ!

③へ続く。


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