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シトルリンとシトルリンマレート:どちらが優れている?

シトルリンはアミノ酸の一種であり、私たちの体内で一酸化窒素(NO)の生成に関与しています。

NOは血管を拡張し、血液循環を改善することで、酸素や栄養素の供給を促進し、筋肉のパフォーマンス向上や運動能力の向上に役立つと言われています。

トレーニング前に血管拡張を促すことで強いパンプ感を得られることから、プレワークアウトサプリメントに配合されていることもしばしば。

ここで、海外のサプリメントを見ると、”シトルリン”ではなく”シトルリンマレート”と記載されていることがあります。

”マレート”って何?と疑問に感じる方も少なくないことでしょう。

そこで今回は”シトルリン”と”シトルリンマレート”の違いについて解説します。

シトルリンとシトルリンマレートの違いについて

まず結論からお伝えすると、シトルリンマレートとはシトルリンとリンゴ酸を組み合わせた成分になります。

リンゴ酸はクエン酸回路を構成する物質です。クエン酸回路は、糖や脂質、たんぱく質をクエン酸を含む8種類の酸に分解する過程で膨大なATP(エネルギー)を生み出す化学反応のことを指します。

ヒトにはエネルギー生成経路が主に3つありますが、クエン酸回路を使用した経路は唯一酸素を必要とする一方で、生成できるエネルギー量が膨大であることが大きな特徴です。

シトルリンの摂取は血管拡張を通じて、各組織への酸素や栄養素の運搬を効率的にします。

つまり、シトルリンマレートを摂取することで、酸素とクエン酸回路の中間体のリンゴ酸の供給に繋がり、シトルリン単体よりも効率的にATPを生成できるようになると考えられているのです。

シトルリンマレートの想定されるメカニズム

実際はどちらが優れているのか?

単純に比較するとリンゴ酸という+αがある分、シトルリンよりもシトルリンマレートの方が優れているように感じます。

しかし、残念ながら実際にシトルリン単体とシトルリンマレートの効果を比較した研究は現時点ではありません。

またリンゴ酸を摂取することによるパフォーマンス向上効果を確かめたヒト試験もまだないのが現状です。

そのため、シトルリン量を同量摂るのであれば、シトルリンよりもシトルリンマレートの方が優れている可能性はありますが、現時点では何とも言えません。

用法用量について

最後にパフォーマンス向上効果が期待できる摂取量についてみていきましょう。

シトルリンやシトルリンマレートは明確な推奨量は定められていませんが、パフォーマンス向上効果が確認されているこれまでの研究から下記の量摂取するのが妥当だと考えられます。

  • シトルリン単体:3~6g

  • シトルリンマレート:6~8g程度

シトルリンマレートの量がシトルリンよりも多いのは、リンゴ酸が付着しているためです。

研究で用いられているシトルリンマレートの多くは、シトルリン:リンゴ酸の比が2:1となっています。

つまりシトルリンマレート6gから摂取できるシトルリン量は、4gということになりますね。

しかし、実際にサプリメントメーカーからリリースされているシトルリンマレートを調査すると、ほとんどの製品のシトルリン:リンゴ酸の比が1.6:1であったことがわかっています(1)

さらにひどい製品では1.1:1のものもあったようです。1.1:1 の比率で 6gのシトルリンマレートを摂取すると、シトルリンは3g程度しか摂取できません。

消費者がサプリメントに含まれるシトルリンマレートのシトルリン:リンゴ酸比を正確に知り得ないことを考えると、筆者としてはシトルリン単体で摂取することを推奨します。

◆参考文献

1.Gough LA, Sparks SA, McNaughton LR, Higgins MF, Newbury JW, Trexler E, Faghy MA, Bridge CA. A critical review of citrulline malate supplementation and exercise performance. Eur J Appl Physiol. 2021 Dec;121(12):3283-3295.

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