【百物語】幸運をもたらすもの
ある日、中年のサラリーマンが自殺した。死んだのは、高田一良、45歳の会社員だった。高田の部屋からは、自筆の遺書も見つかった。
刑事の前田は現場検証に訪れた。
「この手の仏さんは、いつ見ても壮絶な顔していますね。」
運ばれていく死体を見ながら、前田の後輩の今井が声をかけた。
遺書に書かれていたことは、三年前に交通事故で娘を亡くし、妻にも病気で先立たれたことが、高田の心に大きな衝撃を与えたらしい。彼の人生は、娘をなくした三年前から転落の道をたどっていたようだ。
「この年でマイホ