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Twitter詩

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2021年9月の記事一覧

Twitter詩「まひるの遊泳」

 

わたし、ぎょっとした。

紙面の白さにくらべ、

あまり顔色が良くなかったんだ、

世界は。

 

まひるには、頁からことばたちが浮遊する。

気持ちよさげに泳ぐ宙を、

耳の下らへんにあるえらで吸い込むんだ。

飽和したひかりのなかで、

ことばは自重でしずみゆくけど、

吸い込まれたものたちは

わたしの胸で反芻して、

しきりにろっ骨を鳴らせていた。

 

心臓は冷めていくんだ。

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Twitter詩「サボテン」

宇宙船はいつも真っ青で

猫になりたいニンゲンが嘲笑う

世間ってやつの食いつぶされる夜

 

わたしは百年くらいねむりたくて

でも猫の苦労を知ってしまえば

誰だって透明になりたがる

なんて馬鹿な話だろう

 

樹海で千年生きる地衣類に

その残虐性を歯牙にもかけないニンゲンの

あまい血の味を教えてやりたい

 

考えなしに息を吸っては

吐いている冗談

いつか、食いつぶされた夜が

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Twitter詩「Sepia」

草原にいるように、雨が降っていた

こども部屋の一角には

壊れたラヂオと木時計

窓から射し込む光芒に

変わらないでいる

おもい、かげ

コロの首輪の痩けた朱

ひなげしの種、庭に蒔こう

Twitter詩「Blue」

四角いカンヴァスの午後に

ひえたカエルが泳いでいる

カーテンは陽光

窓辺のぶちねこ

灯火はいつも3秒だけ

ぼくに余白をくれる

おやつの時間に降るあめに

ぼくのこころのラジオに

消して止まない

ブルース、ください

Twitter詩「玉葱」

芽のでた玉葱を埋めると

おいしい遺骨になって帰ってくる

3分クッキングで倣った

愛の基礎的な込め方です

 

夕暮れのやけに暗い調理場で

夏に病んでは止まるタイマーの

電子的な数字が溶けていくような

感覚が額に、熱として残っている

 

もし、私が死んだら

ぱさぱさと土を被せてください

おいしくてきれいな骨に

私もなりたいのです