【雑多小説】ふとん、洗濯デビュー(後)

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クリーニングに預けるか、コインランドリーにするか……。
だらだらと、じっくりと悩むこと4日。さすがに悩み過ぎである。
いや、悩んでいたのではない。このふとんを外に連れ出すことが決定したあの日から、洗濯ネットに入れっぱなしにされたふとんを横目に3度の夜を過ごしたのだった。
つまりただ私のズボラが発揮された。
ネットの中で窮屈そうなふとんのしわが、困り眉に見えた。
正直なんでもいいから早く洗ってほしい。
私も困り眉になる。これでも毎日考えてはいたんだからね?

クリーニングに出した方が、より綺麗なふとんになって帰ってきそうだ。
前向きな気持ちでクリーニングのサイトを開く。
かわいい私のふとんのために下調べは必須である。
距離、自転車で10分。コインランドリーとほぼ同じだ。ふむ。
そして料金表を見る。一番大事な情報。コインランドリーはだいたい800円くらいだがこちらはいかがか……____ん?
たかっ。高いわ。値段が4倍くらい違う。
クリーニングは一人暮らしの学生には割に合わなかった。
結局コインランドリーに決めた。そりゃそうだ。

私はとうとう、ふとんを外に連れていくことになった。
ふとんは自転車のカゴにパンパンになって入っている。
自転車のペダルをこいで、徐々にギアを上げていく。
秋の風が頬にかすめる。
私は今、初めてコインランドリーに行こうとしている。
それだけで、達成感がなぜかすでに湧き上がってきている。

コインランドリーには憧れがあった。エモーショナルなイメージがあるからだ。その憧憬を体現するように、待っている間は本でも読んでいようかと思っていたが、ショルダーバッグには財布と携帯しか入っていないことを思い出して苦笑いした。ずっとふとんのことで頭がいっぱいだった。

コインランドリーに着いた。ウッド調の温かみのある店内。
その中に立つ無機質な機械。「カード発行」?
なんのカードかもよくわからないまま、1,000円札を入れた。
洗濯機を見て分かったが、このコインランドリーで使えるICカードだった。
別になくてもコインランドリーは使用できるのだが、もう残りの空き台数が2台しかない状況で、私にスマートな判断はもはや不可能だった。
しかし、その表情はいたって冷静であったと思う。
流れるように買ったカードを洗濯機に吸い込ませた。ついにふとんを洗う。
洗濯機の扉を開けてから、15秒くらいたっていたただろうか。
少し時間が流れてから、ふとんを手放し、扉を閉めた。
お互いが健闘を祈るように。
そして開始の機械音が店内に響いた。
ぐるぐる回り始めたふとんを確認し、静かに店を出た。

回り始めてから45分後、迎えに来たら、
私のふとんが誰かの手によって取りだされていた。
私のふとんをぐるぐる回していた洗濯機は、すでにほかの誰かの洗濯物を回していた。

登り坂と濡れたふとんのせいで、帰りのペダルがとても重い。
コインランドリーは難しいと思った。
はじめに購入したICカードのことを思い出す。
あれ、買わなくてよかったのに。もう当分使うことはない。
次来た時には忘れて、また同じように買う気がする。

しかし、一番難しいのは、乾燥機を拒む、このデリケートなふとんの干し方であった。

秋はまだ始まったばかりである。


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