「お前の価値観、押し付けるな!」という押し付け 【書評】自己矛盾劇場

本日は「自己矛盾劇場」という本の紹介です。

僕らは普段、さまざまな自己矛盾を見かけます。例えば仕事をしている時や友人と話している時、そしてSNSの投稿などで、こうした会話を見たこと・聞いたことはないでしょうか?

自己矛盾1】
「ここだけの話にして欲しいので、他の人には言わないでくださいね」
➡自分は話しているのに、他人に話すことを禁止している

【自己矛盾2】
「お前の価値観を俺に押し付けるな!」
➡「他人に価値観を押し付けるべきではない」という価値観を押し付けている

【自己矛盾3】
「今の時代、多様性を認めなくちゃいけないよね」
➡多様性が必要であると主張しつつ、多様性の無い人を認めていない

この話を聞いて、僕は「やはり俺の青春ラブコメは間違っている。」(俺ガイル)の一場面を思い出しました。
それは高校生の主人公が他校の生徒と合同イベントを企画するために、ブレインストーミングをしている様子です。

【自己矛盾4】
他校の生徒「もっとイベントの規模を大きくしよう」
主人公「規模を大きくするには、時間と人手が足りないぞ」
他校の生徒「No、No、そうじゃない。ブレインストーミングは相手の意見を否定しないんだ。
(中略)
だから君の意見はダメだよ」
主人公「お、おぅ……(その割に俺の意見、即否定されたんだけど)」

出典:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

俺ガイルは僕の好きなラノベで、ストーリーよりも作家の言語化力の高さが見どころなのではないかと、個人的には思います。
巻数が多くて一から最後まで読むのは大変ですが、アニメも出ていますので、手っ取り早く内容を知りたい方はアニメから入るのもおすすめです。

話を自己矛盾劇場に戻します。

この本は世の中に溢れるさまざまな自己矛盾を豊富に紹介し、それを理解することで改善につなげようという趣旨で書かれています。
しかし、最終的には「自己矛盾は、生きている限り避けられない」という結論に至ります。私たちは自己矛盾とともに生きつつも、それを理解し、できるだけ改善していくことが重要だと示唆しています。

自己矛盾して何が悪いの?

「自己矛盾は避けられない」という意見に僕も同意しますが、この本には「自己矛盾の何が問題なのか」という指摘が不足しているように思います。そもそもこの本を手に取ったきっかけは、「自己矛盾が許せない」という想いが元々僕自身にあったためです。
自己矛盾はあらゆる問題を引き起こすことがありますし、その矛盾について自覚的ではない人があまりにも多い。

僕が介護業界(有料老人ホーム)にいた時にも、ちょっとおかしいケアマネジャーがいました。彼は、その時の気分によって主張が変わり、多くの介護職員が振り回されていたのです。

ケアマネの仕事は、介護施設に入居する人の状態を知り、その人に合ったケアプランを作ることです。
ケアプランを作るのに必要な情報は、
・杖や歩行器があれば自分で歩けるのか
・認知症の進行具合はどうか
・持病はあるのか
などなど。

こういった情報を入所希望者本人やその家族、医療関係者などからヒアリングします。
なお、このヒアリングを実施するのはケアマネではなく、一部の介護職員でした。
介護職員はヒアリング内容を書類にまとめ、ケアマネに提出。そしてケアマネージャーは書類を基にケアプランを作成する。こういう流れでした。

しかし、問題はケアマネージャーからの指摘で、その内容が時と場合によって変わることです。簡単に言うと、

【自己矛盾5】
ケアマネ「書類はフォーマットAでまとめてね」

~1か月後~

ケアケアマネ「なんでフォーマットAで書いたんだ! フォーマットBにしろと言っただろう!」

といったように、発言が矛盾しているんですよね
自分で言ったことを忘れているのか、それとも覚えていて敢えて言っているのか定かではありませんが……

はっきり言って害悪ですよね!

言うまでもないですが、介護の仕事って、こういったヒアリングがメインでは無いのですよ。入居者の介助や記録作成、新人の教育、施設内のイベント企画などなど、やるべきことはいくらでもあるのです。
その時のケアマネの気分でフォーマットを修正させられるのは明らかに時間の無駄ですし、効率的ではありません。

まぁこういう人って、介護現場だけではなくあらゆるところに存在するんですけどね。

あなたの周りにもいませんか?
主張に一貫性が無い人や言動不一致な人。
立場の強い者の顔色を窺ってばかりいて、自分の意見を簡単に変える人。

このように自己矛盾によって問題は生じますが、それについて自己矛盾劇場では指摘されていませんでした。僕はこの点にやや違和感を覚えたのです。

おそらく著者にとって、自己矛盾が引き起こす問題については百も承知であり、当たり前すぎて省いたのかもしれないですが。

「お前の主張は矛盾している!」と僕も言われかねない

冒頭でもお伝えした通り、僕は自己矛盾への耐性がなく、普段から「筋を通すこと」にこだわっています。
どういうことかというと、「一貫した主張をすること」と「言動を一致させること」を自分で意識していて、他人にもそれを要求(強要)しがちです。

ですが、本書で述べられている通り、誰でも自己矛盾は起こり得るもので、他人のそれを指摘するのは簡単。しかし自分ではなかなか気づけない。

特にインターネット上での発信は残るので、指摘しやすい。

Xを見ていても、過去のツイートと現在のツイートをスクショに撮り、鬼の首を取ったかのように得意げに主張の矛盾を指摘する人っていますよね。

ライターとして活動している僕も、そのうち自己矛盾に陥り、誰かから指摘それるかもしれません。
例えば、過去にビットコインを推奨した記事を書き、その後にビットコインを否定する内容の記事を書く……
知らない間にそんな状況が出来上がっている可能性もなくはない。

もちろん生きていれば誰でも考え方は変わります。それ自体は悪いことでは無いでしょう。

自己矛盾を極力無くすには「思いつきで発言しないこと」が大切で、考え方が変わったのなら、なぜ変化したのかを説明できれば良いのではないかと。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?