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映画「旅立ちの時」

1988年のアメリカ映画.主人公ダニーは17歳の少年ですが,両親はベトナム反戦運動によりFBIから指名手配を受けていて,全米のあちこちを移動しながら逃亡生活をおくっています.主人公もそのつど名前をかえ,学校も転校をくりかえしています.

ある学校の音楽教師が主人公の音楽的才能をみいだし,ジュリアード音楽院への進学を勧めます.ダニーはまた音楽教師の娘と恋におちます.そんなときに家族にFBIの捜査の手がのびてきて,あらたな「引越し」がせまられることになります.そのときダニーの決断は?

両親は自由と平和への信念を堅持し,家族ぐるみで十数年の逃亡と潜伏生活をおこなってきました.そのなかで成長し青春を謳歌するダニーの自己形成をえがく青春映画です.思想の左右を問わず,アメリカ人はこういった自由と自主を重視する,いわばリバタリアン的な価値観に共感する傾向がありそうです.

わたしがマイナンバーに違和感を感じ消極的な態度をとるのも,国民総背番号制のもとではこういった反体制的の存在のいっさいが許されないからです.便利とか効率性の名のもとに,人間としてもっともたいせつなものをゆずりわたしてしまうような気がするのです.

中国では人民をすべて番号で管理し,いまではウェブ決済が主となって現金すらあまり使えなくなりました.そうなるとすべての所在と行動はあきらかにされ,「潜伏逃亡」はまったく不可能です.100年前にオーウェル,ハクスリー,ザミャーチンが構想したディストピア社会がいまや現実のものになりました.

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