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風疹疑いの妊婦さんへの対応

近年の風疹流行は2018-19年でした.風疹流行はだいたい5年おきとされていますので,いまだその徴候はでていませんが,そろそろ次の流行に注意しなければならないと考えています.産科的視点からたいせつと思うことをここにまとめます.

妊娠中に風疹に罹患すると胎児が先天性風疹症候群になることはよく知られていて,風疹の流行のたびにそういった子が全国で何十人生まれたという報道がよくなされます.さらに深刻なのは,そのかげには先天性風疹症候群をおおそれて,人工妊娠中絶された胎児がその100倍以上存在しており,実はその多くが正常であるという事実です.妊娠しているかたがパニックになってしまうためと考えられます.

そうした悲劇をなくすために,前々回の流行時(2004年)に厚生労働研究班が対応プロトコールをつくっていいます.妊娠中に風疹感染が疑われる妊婦を全国17か所の2次施設に集め,そこで専門的な評価やカウンセリングを行うもので,必要ならば羊水遺伝子検査まで対応します.https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/10/rubella_soudanlist.pdf

無症状の妊婦に採血によるスクリーニングをおこなうときは要注意です.風疹抗体価の高値を認める妊婦は多く,そういったかたにはかなり注意深く対応しなければなりません.感染者との接触歴や皮疹,発熱の有無などをていねいに問診し,そういった既往のない妊婦はほとんどの場合で心配ありません.

なによりも妊娠前にワクチンをうっておくことがいちばんにたいせつなことです.ところで風疹ワクチンは生ワクチンですので,妊娠中は禁忌であることもよく知られています.そして妊娠に気づかずにワクチンを接種した女性が,あとから妊娠とわかったときに中絶してしまうこともしばしば認められます.

生ワクチンのリスクというのはあくまでも理論的な可能性にすぎず,風疹ワクチンによって胎児に異常が生じた例は,世界中にいまだないことはよく知られていません.妊娠中にワクチンをうったからといって中絶する必要はないのです.そういったカウンセリングも上記専門施設でおこなっています.

これもあまり知られていませんが,風疹だけでなく,妊娠初期の水痘も胎児に奇形をおこすことがあります.麻疹(はしか)ウイルスは胎児には影響がないのですが,子宮に強い収縮をおこして多くが流早産します.上記疾患を網羅するMMRVワクチンをみながこどものときに受けておくことが理想です.

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