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どんでんがえし|「素敵な日本人」を読んだ

わたしが通い詰めていた、小学校の図書館は、本を借りるには自分のカードにタイトルを書き込んで、バーコードをピッとする手順だった。その自分のカードは当然たくさん本を読んでいる人の方が枚数が多くなっていく。そして枚数ごとに色が違う。

1枚目は白、2枚目は黄色、3枚目はピンク、4枚目は水色、5枚目はオレンジ。6枚目は黄緑。こんなことよく覚えてるな、わたし。
途中の色は忘れたけど、10枚目が紫だった。クラスで紫のカードに到達したのはわたしだけで、紫ってところがまたかっこよくて、なんだかくすぐったい気持ちになった。

そんな本ばかり読んでいた小学生の頃、星新一のショートショートを読むのが好きだった。なんだかドキドキして、少しこわくて、ロジカルで。今思えば相当変わった小学生だ。
「素敵な日本人」も短篇集で、星新一のショートショートにちょっと似てるな、と思った。

以下入っている短編のタイトル。

1.正月の決意
2.十年目のバレンタインデー
3.今夜は一人で雛祭り
4.君の瞳に乾杯
5.レンタルベビー
6.壊れた時計
7.サファイアの奇跡
8.クリスマスミステリ
9.水晶の数珠

もちろん全部すごい。予想もしなかったどんでん返しの連続。その中から私が特に好きだったどんでん返し2つを紹介したい。(ネタバレなしだよ!)

 

10年目のバレンタインデー

執念さえあれば、人間いろんなことができると思う。恋愛、コレクション、勉強、ダイエット、復讐。

作家として成功をおさめている男と、その男のファンで、以前その男と交際もしていた女の話。女は数年前、突然男に別れを告げた。タイトルと物語の序盤だけ見ると、数年越しに会って、よりを戻す甘い夜を描く物語にみえるかもしれないけど、これは東野圭吾作品。もちろんそうではない。じわじわ、目の前にいる女の人が鋭く見えてくる。

 最後まで読んだら、絶対にもう一度読みたくなる。一度目に読んだ時には、伏線っぽい、怪しい、とも思わなかった細かい言葉や描写が、あれもこれも伏線だったのか、と気づくのが、すごく気持ちいい。

 

レンタルベビー

近い未来の日本は、どうなっているんだろう。

コロナウイルスの影響で、悲しい出来事も多いけど、いろんな物事が変革するきっかけにもなる気がしている。紙で提出するべきだった書類がオンラインで済む。学校の授業がオンラインになる。合コンもデートもオンライン。
このあたりはわかりやすいけれど、もっとわたしのような一般人にはわからないような水面下で、いろんな技術が進んでいくきっかけにもなるような気がする。

この物語の世界線では、疑似子育て体験ができる。本物のようなふわふわの肌を持った赤ちゃんのロボット。主人公のエリーは、かなり軽い気持ちで赤ちゃんロボットをレンタルし、疑似子育てを始める。
が、高い技術で本当の子育てに限りなく近づけた疑似子育てではいろんなトラブルが起きる。ロボットだけど、ご飯も食べるしうんちもする。夜泣きもするし、熱も出す。旦那も仕事が忙しく、協力的ではない。

そんな毎日の中で、エリーはだんだん赤ちゃんロボットに母性を感じ始めるが、レンタルの返却期限がきて・・・

 

途中までなら、こんなサービスができてる未来いいなあ、とか、いやいやこれってどうなの、とか、そういう感想が生まれるだけだ。だけどやっぱり東野圭吾は違う。

こんな短い物語なのに、最後にどんでん返しを食らう。ネタバレになるからその中身は書かないけど、読み終わった瞬間、「はあ…」とため息をついてしまった。終わり方がすごい。この物語を読んで頭に浮かんでいた映像が、すべてガラリと変わってしまうような終わりが待っている作品。

 


とにかくどの作品もすごい。そしてどれも20分くらいで読み切れる長さなので、読書を普段あんまりしない、という人で、コロナをきっかけになんか読んでみようかしら、という人にもオススメ。
久しぶりに星新一のショートショートも読みたいなあ。





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