新卒1年目で学んだゲームのロゴ制作の心得

本記事はCraft Egg Advent Calendar 2022の12月21日の記事です。

自己紹介


はじめまして、Craft Eggでデザイナーをしています、村田と申します。

2022年にサイバーエージェントに新卒入社し、現在はCraft Eggでスマホゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」(以下、ガルパ)にデザイナーとして携わっています。

主な業務はグラフィック制作です。ゲーム内外で使われるロゴや楽曲のジャケットなどを制作しています。

もともと総合大学でデザインを専攻していたので、ふれる機会はあったものの、ゲームづくりには全く携わったことがありませんでした。

そんな業界初心者の自分がこの半年で自分なりに気づいた、ゲームのロゴ制作の心得を、実際に作ったロゴの制作フロー交えて紹介したいと思います。

ゲームのロゴについて

皆さんはゲームのロゴに対してどのようなイメージを持っているでしょうか。装飾が多い。色数が多い。形も複雑。などなど。様々なイメージがあると思います。

「ゲームのロゴ」と大雑把な書き方をしましたが、もちろんゲームの種類によって印象はガラッと変わりますし、一つのゲーム内でも、タイトルロゴ、ガチャのロゴ、イベントのロゴ…など様々なロゴが登場します。

ですが、冒頭のイメージは間違ってないと思います。それはゲーム内に登場するキャラクターとそのキャラクターが繰り広げる世界観を楽しんでもらうことをゲームが目的としているからです。

スマホのホーム画面見ると、SNSやメール、天気や交通サービス、これらのサービスのロゴはどれもシンプルなものが多いです。一方で、ソシャゲのアイコンを見てみると…ほとんどのゲームでキャラクターの顔が大きく映されているかと思います。ロゴは見当たりません。

このことからもゲームがキャラクターとその世界観を大切にしていることがわかります。その世界観の顔ともなるロゴには、その世界観を想起できるようなイメージが詰まっています。だから、自然と装飾や色数が多くなることが多くなるのだと思います。

入社してつまづいたこと

いろいろと偉そうなことを書きましたが、入社して最初に任されたロゴ制作時にぶつかった壁があります。

それは、
「ガルパらしくならない!」
要するにガルパの世界観を感じられない、ということです。

実はガルパ自体は入社前から遊んでいました。始めたのがリリースから1年くらい経ってからなので、コンテンツ自体はかなり理解しているつもりだったのですが、いざ制作する側になってみると今までちゃんとクリエイティブを見られていなかったことを痛感しました。

では、どういう点がガルパらしくなく感じたのか、具体的に見ます。

と、その前に比較対象としてガルパの既存のロゴを見てみます。ガルパの「タイトルロゴ」と「ガルパ杯」(※)のロゴです。
ガルパ杯とは、リズムゲームの腕に自信があるプレイヤー同士でスコアを競い合い、優勝を目指すイベントです。

赤やピンク、黄色を多めに使っていますね。全体的に温かい印象を受けます。細かく見てみると、特徴的なのが境界線です。どちらも太めで角は丸くなっています。ドロップシャドウは入っていますが、ぼかさずくっきりとはいっているので、全体的にフラットな印象を受けます。グラデーションもはっきりとわかれるように入っています。

そしてこちらは、「ガルパクイズ王」という施策のロゴの初期のラフアイデアです。パッと見たときに、上で紹介した2つのロゴとは雰囲気が違うと感じたかと思います。

カクカクしたフォントや、同様に細く角張った境界線、グラデーションやパースのきかせ方、ぼかし多いの影などによって生まれる立体感がらしくない…など、細かく挙げるときりがありません。
これではユーザーが違和感を感じて、世界観に入り込めません。

反省点としては2つあります。

  • ガルパのクリエイティブの観察が足りなかった。

  • 最初から装飾に頼り過ぎていた。

この2つです。

1つ目は、細かいグラフィックの特徴を観察していなかったということです。ある程度遊んでいるコンテンツだったため、ふんわりとこういう感じだよね、というイメージはあったのですが、一個一個の細かい特徴を意識して見ていなかったため、いざ作ろうとしたときに違う方向性になってしまったのだと思います。

2つ目は、ラフ段階なのにそれっぽいロゴに仕上げようという意識が先行しすぎて、レイアウトのアイデア出しが足りていなかった、ということです。その結果、らしくない装飾を入れることにもつながってしまったのだと思います。

改めて、形を見直したいということになり。白黒でパターン出しを行いました。

こうすると要素が削ぎ落とされて、見比べやすくなりますね。たくさんあるパターンも軸を持たせて展開することも見比べやすさにつながっていると思います。このときはフォントに対して「エレガント」←→「元気」という軸をあてて展開しました。

ロゴのアウトラインはロゴの土台の雰囲気を決める非常に大切な要素です。目が肥えていないうちは、判断しやすいようにパターンを出したい要素を明確にして、少しずつ進めていくことが大事なんだと思います。

その後も、たくさんのフィードバックを通して最終的にできたロゴがこちらです。

初期の雰囲気とは全然違いますね。ガルパらしさもありつつ、クイズの知的な感じを出せたんじゃないでしょうか。濃い赤色の背景のサイトに載せる予定だったので、背景の赤とロゴに用いる赤とのバランスが難しかったです。

ゲームのロゴづくりの心得

「ガルパクイズ王」のロゴの制作からしばらく経ち、他のイベントやガチャのロゴもいくつか制作してきましたが、現時点で考えるゲームのロゴづくりで大事なことを2つ挙げてみます。

  • 目的を持って観察する

  • なぜを言語化する

目的を持って観察する

これは「なんとなく見ていても、デザインの引き出しにはなりにくい」ということです。

今回紹介はしませんでしたが、ロゴ制作において重要な作業であるリファレンス集めでも大事なことです。なんとなく参考画像を漁っているのと、「〇〇な印象を与えられるイメージ」「このモチーフの入れ方を探したい」というような目的を持って漁っているのとでは、画像に対する感度がかなり変わってきます。

一見、目指したいロゴとは関係ない資料に見えて、実は参考になる要素があったり、アイデアを広げることにも繋がります。

「なぜ」を言語化する

なぜを考えることで本質を考えることは、デザイナー以外の職種でも大事な考え方ですが、個人的にはアウトプットを絵で見せるデザイナーこそ大事にすべき考え方だと思っています。

仕様書をもとにロゴの制作をはじめる場合でも、仕様書に対してなぜをぶつけ、自分なりに咀嚼して目的を言語化した上で制作を始めます。
その後、制作した案を提案する際も、なぜを言語化しておくことで、他者との認識をすり合わせやすくなります。

要素や色数を増やすことの多いゲームのロゴだからこそ、なんとなくいいからという理由で進めずに、常になぜを自分に問いかけていくことが大切です。

おわりに

以上が新卒1年目で学んだゲームのロゴの心得です。

ゲームのグラフィックを始めたばかりの頃は、慣れないフォトショを使って、装飾多めのロゴを作ることに苦手意識がありました。

その意識が解消されたかと言うと嘘になりますが、こうして改めて考えてみると、ロゴ制作において土俵がゲームになったとしても、根本的な考え方や行動は変わらないのだと思います。

この記事がロゴ制作に悩む誰かの役に立ちましたら幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!

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