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映画「ディレンジド 人肉工房」レビュー「中年男の即物的な性格と殺風景な心象風景に生まれてこの方1度も異性に関心を持たれた事のない僕の為の映画だと思いました」。

母の死を受け入れられないショボクレ中年男が母親の亡骸を墓から掘り起こして剥製にするも「母親が喋らない事」が満たされず,母親になり切って1人2役で母親と「会話」する場面が素晴らしい。
このマザコン中年男にもキチンと「性欲」があって次々若い女を拉致監禁するも目的を果たせず凶行に走る。
若い女を拉致監禁して中年男と彼の「剥製の家族達」と一緒に食事する場面は「悪魔のいけにえ」のサリーを囲んだ一家団欒の食事風景を連想させる。
殺人行為に場慣れするにつれて男が貧弱な坊やから獲物を狙う狩人へと変貌する。
1人の猟奇殺人犯の誕生から末路迄を淡々と追う。

「サイコ」も「悪魔のいけにえ」も
本作もエド・ゲイン事件を基にしてるんだけど
「主人公の救い様のなさ」は本作が一番好きかもね。
1人2役で死んだ母親と会話し
女物のカツラを被り女装する中年男に
僕は洗練されないノーマン・ベイツを見るのは当然なんだけど,
僕は「サイコ」をよりスタイリッシュにより洗練させようと
試みたデ・パルマ監督の「殺しのドレス」より
より滑稽により無様な方向にに突き進んだ結果,
「サイコ」よりも洗練度が劣る結果となった本作の方に好感を持つ。
「時代の流れ」に抗って逆走する不器用な所が
オシャレとは無縁の僕の琴線に触れるのだ。

勿論「そういう映画」の大先達の「悪魔のいけにえ」がある訳で,
映画としての出来は「悪魔~」の方が上なんだけども,
本作の朴訥とした語り口がどうしても嫌いになれないのだ。

マザコン中年男の即物的な性格と殺風景な心象描写は
スタイリッシュとも洗練とも無縁であって
生まれてこの方一度たりとも異性に関心を持たれた事のない
救い様のない僕の魂に寄り添っていて好感が持てる。

「ホラー映画愛好家」を鏡に映したら
本人評価はきっとレザーフェイスが映ってるんだろうけど,
客観評価はレザーフェイス程の人気キャラには未来永劫なれない
本作の主人公…ショボクレた初老のオッサン…エズラ・コブが
映っている筈なのである。

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