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映画「渚にて」ブルーレイレビュー「めそめそと滅びる世界」。

第3次大戦が勃発して北半球は壊滅。
唯一残ったオーストラリアにも5か月後に放射能が到達する。
国は病院を通して市民に安楽死の薬を配布し始める…。
米国潜水艦艦長(グレゴリー・ペック)は
謎の電信を受け死都サンフランシスコへと向かうが…。

初見。
エヴァ・ガードナーが「好意を抱いても愛に育てる時間がない」と嘆き,
アンソニー・パーキンスとドナ・アンダーソンが馴れ初めを回想しても
「でも赤ちゃんには馴れ初めの存在しようがない!」
と嘆く,女が延々嘆く,めそめそした展開が続くが故に
恋愛描写が皆無でエヴァとドナが輝けない。

この映画さあ,超有名映画スターを集めておきながら「恋愛する」って
「得意手」を封じてるので,観ているこっちは
「何かパッとした事起これ!」
ってムズムズするんだよね。

ブックレットによると本作は
This is the way the world ends(こんな風にしてこの世は終わる)
Not with a bang but a whimper(バーン!とではなくめそめそと)
ってT・S・エリオットの詩を引用して作られたと言う。
「めそめそしてる」のは仕様なのだ。

平野耕太先生の「ドリフターズ」の信長と豊久がいたらきっとこう言う。
(信)ああ嫌だねえ,こんな風にめそめそと滅ぶ国はパッと燃え尽きちまえよ
(豊)そうよの,この国は息の根ばさぱっと止めて介錯してやらねば可哀想ぞ

豊久もこう言ってます。

ドリフのふたりが介錯したがる映画って事ですね。

一応ね。

とっくの昔に「死都」の筈のサンフランシスコから
電信を送り続けているのは「誰」なのかって
「謎」…と言うよりも「希望」はあるのですが…。
この映画の「めそめそした」仕様から言って
「希望」なんて待ってるワケないじゃん…。

吹替の尺は95分位。それでも十分辛気臭い。
「TV放送版吹替連続再生機能」を使用すると
一度も字幕に変わらずに95分版本編を視聴出来ます。

画質は余り綺麗じゃありません。

特典は予告編のみ。
プレミア上映に昭和天皇と皇后さまのお姿が確認出来ます。
本作は初めて「ワールドプレミア」を実施して各国の「偉い人」を招いて,
反戦を呼びかけたのが最大の功績なのでしょうね。
「反戦を呼びかける作品」を批評すると
要らん謗りを受けるのが痛し痒しとブックレットは主張してる。

もっともっと「本当の事」が言いたい気持ちが伝わって来ますね。
だってさあ「はだしのゲン」とか「この世界の片隅に」の事を悪く言って「軍国主義者!」とか「軍靴の音が聞こえる!」とか喚かれたくないじゃん。

喚かれたくないから黙ってるけど「黙らされている」事には反感を覚える。
そんな微妙な気持ちなのですよ。
「反戦を呼びかける作品」ってのは。

作家の菊地秀行先生が著作「魔界シネマ館」で
この映画のレビューを書かれてて
嫌世感から次々と人々が政府から配られる
「安楽死できる薬」で死を選ぶ中,
教会の「兄弟たちよ未だ遅くはない」って
立て看板が悲しいって書かれてました。

幾ら「楽に死ねる」って言ったって
水木しげる先生に言わせれば
全ての生き物が生きようとするのは神の意思で
ソレを人為的に遮るのは悪であると断じていて
国が「神の意思」を遮るのは玉砕を命じた軍部であろうと
安楽死の薬を配布する政府であろうと
「悪の手先」にしか見えないのですよ。

ただひたすらに「嫌な感じ」が残る
従って後味最悪な映画ですね。

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