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アニメ「響け!ユーフォニアム」第3期第7話「なついろフェルマータ」レビュー「過去が追って来る」。

北宇治吹奏楽部は府大会を無事突破して関西大会へと進む。
…個人的には「府大会の演奏の模様」
「府大会を突破した吹奏楽部員の歓びの表情」
を描いて欲しかったが…ソレは創作者の意図にはない様だ。
松本先生が「自分が泣くこと」を予想して
ティッシュペーパーを1箱持参していたのが微笑ましい。

北宇治吹奏楽部は恒例の夏合宿を前に3日のお盆休みを取る。
高坂は黄前に…露骨に「プールに連れてって」と誘って来る。
高坂と黄前は色違いのお揃いの水着を買いに行き…。
水着のセパレート下部を交換して着用する程懇意になっている…。
「セパレート上部」は…黄前と高坂は…。
「体格のスペックが違う」ので絶対に交換は出来ないのだ…。

今回の「なついろフェルマータ」は
陣中見舞いにOGの吉川優子と中川夏紀が
アイスを差し入れてくれて
3期に入っての初台詞が口喧嘩と
相変わらずの仲良しぶりを披露したり
すっかり父親との関係が改善し
妹の久美子との関係も良好な姉・麻美子との盆休み等々
微笑ましい描写が多いのだが…。

ソレは…。
「これから起こること」
の衝撃を緩和する緩衝材に過ぎないのだ…

今回の本題は所謂「水着回」で
「眼福回」である筈なのだが…。
京都アニメーションが提供する「水着回」とは…。
「鬱回」と同義なのである…。

黄前はプールに黒江真由を誘う。
黄前は「黒江のコト」を何も知らず…ただ黄前と高坂の
「全国でふたりでユーフォとトランペットのソリがやりたい」
という希望の「最大の障害」としてしか認識していない己を恥じ…。
この機会にじっくり黒江と話をして親睦を深め…。
「黒江のコト」を深く知りたいと願っているのだ。

そして…プールサイドで展開される恐るべき「黒江のコト」…。
黒江「ワタシね…多分普通の人より「自分がない」と思うんだ…」
黒江「「スキ」とか「キライ」とかあんまりなくて…」
黒江「大抵のコトは「どうでもいい」っていうか…」
黒江「…そんな…「自分がない」ワタシのコトを…」
黒江「誰もスキにならない…」

黒江の瞳から「光」が無くなる悪魔的演出…。

黄前は黒江の話を聞いているうちに…。
黄前が黒江に感ずる「苦手意識」の「正体」を直感しゾッとする…。

この女…黒江真由は…。
「高坂麗奈と出会い…彼女の「うまくなりたい」って情熱に
感化されなかった場合の自分…『もうひとりの黄前久美子』」
なんだって…。

黄前が1年のときの高坂との大吉山での会話
高坂「ワタシ本当はさあ」
高坂「前から思ってたの」
高坂「久美子と遊んでみたいなあって」
高坂「久美子って性格悪いでしょう?」
黄前「ワタシのコト…DISってます…?」
高坂「褒めている」
高坂「中3のコンクールでアンタ…」
高坂「『本気で全国に行けるって思ってたの?』って抜かしたよねえ…」
高坂「性格悪いでしょ?」
黄前「やっぱりDISってますよねえ…?」
高坂「違うね…コレは愛の告白なんだッ」

高坂は黄前の「性格の悪いところ」を
スキと言って受け入れてくれた人物で…。
黄前は高坂に「愛の告白」をされた事によって「ルート分岐」が発生し…。
高坂と共に全国金を目指す北宇治吹奏楽部部長になった…。

だが…黒江真由は高坂麗奈の様な
「嫌な嫌な嫌な自分」を変えてくれる「運命の出会い」に恵まれず…。
依然として「ただの嫌な嫌な嫌な性格の悪い女」として…
中学3年生の頃から微塵も成長する事の無かった
「「ルート分岐」が発生しなかった場合の黄前久美子」だったのだ…。

今回の序盤の黄前と高坂が懇意に描かれているのは!
黒江に…「もうひとりの自分」に…
「ワタシは…そんな出会いに恵まれなかったケドね…」
「ワタシの人生にはッ…「高坂麗奈」がいなかった…ッ!」
「ソレは…「ワタシのせい」なんかじゃないッ!」
と「より一層恨ませる」為の悪魔的演出の一環だったッ!

黒江真由は…。
「黄前久美子の本性」であり
「黄前久美子の影」であり
「黄前久美子の過去」であり…。
「影」であるが故に吹奏楽部の有志と共に撮った記念写真に
「黒江真由の姿」は決して写る事はないのである。

黄前にしたところで「黒江のコト」をスキにはなれない…。
何故なら黒江は…。
黄前が蛇蝎の如く嫌っている「昔の自分」なんだからッ!

黄前久美子は…。
「黒江のコト」など知ろうとするのではなかったと…。
「自分の過去」が…。
「ルート分岐」が発生しなかった場合の「もうひとりの自分」がッ!
恨みがましい「光」のない瞳でこっちを見詰めながらッ!
執拗に追って来るのに怖気(おぞけ)を感じながら…。

「次の曲が始まるのです」

ホラね…京都アニメーションが提供する
「水着回」は…「鬱回」だったでしょう?

夏と言えば「水着」より「怪談」であり…。
「怪談」の「怖さ」の根源が「恨み」であると良く分かりますね…。

「フェルマータ」とは休符を程よく伸ばすコト。
今回は「休み」で視聴者の皆にも肩の力を抜いて寛いで欲しいと言う
京都アニメーションの「心づくし」に…。
「ぶぶ漬け食うて行きなはれ」と…
京都人にもてなしを受けた心地を嫌と言う程堪能出来るのである…。

前回黄前が鈴木美玲からの「直訴」を受け,滝に選考方針を問い質したところ滝から「限られた人数の練習では音量は相当重要です」と回答を得た件は
恐らく黄前から吹奏楽部全員に周知された結果,
低音のパート練習で1年の釜屋すずめ達が
最大音量を出す練習をしている描写がある。

その釜屋(妹)の練習に府大会向けオーディションで
恐らく釜屋(妹)よりも最大音量が不足してるコトで落とされた
2年の鈴木さつきが付き合っている描写にグッとくる。

「情報」が公平に水平に展開されているから
「妬み」とか「憎しみ」といった感情が
起きてない実に良い光景と言える。

「闇堕ち」すんのは黒江だけで十分なのである。

話は全然違うのですが
加藤葉月が松本先生から促されて高校卒業後の進路のことを真剣に考え始め
松本先生が生徒ひとりひとりの希望を良く覚えているという話題の過程で
黄前「先生ってスゴいなあ」
加藤「久美子が教師になったら
最初の挨拶で「何ですかコレ」って言うよね」
って会話があるのですが…。
コレ…「黄前の将来」の布石…伏線なのでしょうか?
部長として北宇治吹奏楽部を率いた経験が教職に就いて生かされる的な…。

だったら絶対黄前は北宇治に赴任して滝を補佐しますよね…。
ソレが…滝の信任の篤い黄前の「経験」を最大限に生かすんですから…。
「何ですかコレ」と最初に挨拶するかは置くにしても…。

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