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映画「ロボ・ジョックス」レビュー「心を13歳の子供に戻す映画です。」

半世紀前の核戦争で人類の殆どが死滅し元米国があった辺りに「連邦」,
元ロシアがあった辺りに「連合」と呼ばれる共同体を形成して
僅かとなった人類は身を寄せ合って生きていた。
「戦争」は領土や資源の奪い合いで発生するとの反省から連邦と連合は
それぞれを代表する巨大ロボットのバトルの勝敗によって
領土や資源の分配を決めていた。
大気汚染によってマスクを着用しなければ外出もままならず,
半世紀前の戦争によって紙媒体の殆どが消失した結果,文盲率が跳ね上がり
本を読める人間が「学者」として珍重される世の中ゆえに
娯楽が大きく制限された人々にとって
巨大ロボバトルの勝敗を予想して賭けをしたり
観客席で応援する事が数少ない娯楽となった。
巨大ロボの操縦者は最大の敬意を込めて「ジョックス」と呼ばれた。
ジョックスになるには激しい競争があり
現在の連邦のジョックスはアキレス,連合のジョックスはアレキサンダー。
両雄の直接対決の時が迫り
観客も否が応でもヒートアップするのであった…。

アニメ「機動武闘伝Gガンダム」(1994年)より先んじる事5年。
領土や資源の取り分を2体の巨大ロボバトルの結果が決めると言う世界観。
アニメ的設定…と思われるだろうが,
それもその筈スチュアート・ゴードン監督は
子供の頃「マクロス」と「トランスフォーマー」を観て
「日本人が誰も実写で巨大ロボット映画を作らないから僕が作ったんだ」
と言う。
日本人泣かせの「いい話」じゃん。
こりゃ何が何でも日本で公開してやらなきゃ。
本作は1990年2月に
ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭’90(第1回)の招待作品
として公開されました。
配給はウエスト・ケープコーポレーション。
「ヤマト」の西崎義展さんの会社だからウエスト(西)・ケープ(崎)って訳。
同年11月22日に本作のビデオがバンダイで出る事が内定して,
そのプロモーションも兼ねて10月から11月にかけて
高田馬場のエモーショナルシアターパール座で
「ロボフォース 鉄甲無敵マリア」(1988年)と二本立てで上映されました。
本国では1990年4月に映画祭,同年11月21日にロサンゼルスで公開なので,
どちらも日本の方が早いと言う結果となりました。

因みに「ガンヘッド」は1989年7月22日公開。
「ロボ・ジョックス」も映画自体は1989年夏に完成してたから…。
でも「ガンヘッド」の方が映画完成も早いよね…。
とどうでもいい所で「競う」のがオタクの性ですね。

それでも「ロボ・ジョックス」のブルーレイのジャケット裏面には
「史上初の実写版巨大ロボット・バトル・ムービー」って謳ってあります。
やっぱ「史上初」って言葉は魅力的ですね。

興行成績的には惨敗したみたいだけど,
特撮ファンが「そんな事」気にする訳ないじゃん。
本作の人間の体の動きをトレースする
「ジャンボーグA」ソックリの操縦系は,
その後「パシフィック・リム」に継承され
「元祖パシフィック・リム」と呼ばれて再評価されました。

あのさあ!

この「人機一体」の描写に燃えねえ人なんていんの?

あとね!
「巨大二足歩行ロボは容易に転倒を招き,
操縦者が高い確率で脳震盪を起こす」
設定もリアルだし,その弱点を補う為に4足歩行にして転倒しにくくしたりと
マジンガーZが空を飛べない弱点を克服する過程に
手に汗を握った元少年として燃えない訳ないのであった。

連邦と連合のロボは地上でバトルするんだけど,
飛行形態にトランスフォームして宇宙空間で戦う場面があったり,
タンク形態にトランスフォームしたり,
物語の必然なんぞぜーんぜん無くとも
「俺はコレが描きたいんだッ」
って監督の「大人を13歳の子供の心に戻す」意気や良しですよ!

本当は続編でアキレスとアレキサンダーが共闘して
宇宙からの侵略者と戦う構想があったみたい。
そんなの…「グレンダイザー対グレートマジンガー」やん!
観たかったに決まってる!

でもね。
僕が本作で1番感動したのは
アキレスが操縦する巨大ロボが初めて「歩く」場面なんです。

もうね。
赤木リツコ博士になってこう叫んじゃう訳ですよ。

って。

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