見出し画像

映画「ゾンビ 日本初公開復元版」ブルーレイレビュー「道楽の本質」。

ロメロ監督は「ゾンビ」制作時の資金難から
「サスペリアPART2」「サスペリア」で一躍時代の寵児となっていた
ダリオ・アルジェント監督に「ゾンビ」の編集権と
非英語圏(日本など英語が母国語でない国と地域)での上映権と
引き換えに出資を依頼した。
これにより英語圏(アメリカなど英語が母国語の国と地域)では
ロメロ監督の「ゾンビ」(米国劇場公開版)が,
非英語圏ではアルジェントが監修した
「ゾンビ」(アルジェント監修版)が上映された。

斯くしてロメロとアルジェント,ふたりの偉大な映画監督によって
世界は英語圏と非英語圏のふたつに分割されたのだ。

強者による世界分割によって「ゾンビ」は
「米国劇場公開版」と「アルジェント監修版」のふたつに分割されたのだッ!

先に述べた様に日本は英語を母国語としない非英語圏に属しますので
1979年に日本で公開された「ゾンビ」はアルジェント監修版となります。

ところが…「ゾンビ」には死者が生者の生肉を食い千切り
死者が生者の未だ湯気の出ている内臓を貪り喰らう描写が頻出し…。
とてもそのままでは公開出来なかった。
加えて作中,何処を探しても,何故死者が甦り
生者の生肉を喰う食人鬼と化したのかの「説明」が無く…。

日本ヘラルド映画社は次の様な対策を講じた。
1.残酷なシーンはストップモーション(一時停止)して
例えばミゲールゾンビが奥さんの生肉を食い千切る場面では
ミゲールゾンビが奥さんにガブッと食いつく場面で一時停止し
「生肉を食い千切る」場面を飛ばし「次」の場面に移ると言った風に
残酷描写を割愛したのである。
2.映画冒頭に何故死者が生者を襲う様になったのかの
「説明」の捏造・設定。

ドッギャアアアアン!!!!!
謎の惑星が爆発した際に発せられた謎の特殊光線が…。
死者を甦らせたッ!

19xx年 未知の惑星から不思議な光線が地球に到達
この謎の光線は地上の死者を甦らせた…。

このッ!
日本ヘラルド社の大ウソツキがァァァァァ!!!!!
つまり…日本ヘラルド社の馬鹿は
「ゾンビ」をディストピアSF映画として公開したのである。

この…日本ヘラルド社の捏造設定は
TVで「ゾンビ」が初放送される際にも引用された。
(勿論ロメロとアルジェントの「世界分割」により
アルジェント版が放映されている。)

地球SOS 死者が甦った日…「ゾンビ」は終末SF映画ッ!

「地球SOS」では「だから2週間前に大爆発した惑星イオスの特殊光線が
地球上に作用して死者が甦りつつあると言ってるんです!」
とフォスター博士がTVの討論番組で
(原語には全くないデタラメな内容の)熱弁を揮っている。

惑星イオスの大爆発ッ!
地球が地球が大ピンチ!
「使い回し」って言うなッ!

日本劇場初公開時に字幕翻訳された
野中重雄氏の訳は「ラフ=雑」と評される事が多い。
どのくらい「雑」かと言うと…。

ラウシュ博士「ワタシは我々が生きオマエ達バカ者をも救うのだ」

アンタ一体…何言ってんの?
…と言った風である。

つまり1979年に日本で公開された「ゾンビ」は…。
言語道断の代物だったのだが…。

2019年になってクラウドファンディングを実施して
1979年に日本で公開された「ゾンビ」を復元して劇場公開し…。
クラウドファンディング支援者の見返りとして
1979年日本で公開された「ゾンビ」を復元し,劇場公開した内容を
ブルーレイ化して支援者に送る企画が立ち上げられた。

発起人は
ザジフィルムズ・スティングレイ社・フィールドワークス社の3社。
また主演のケン・フォリーとゲイラン・ロスを日本に招き
談話をDVD化しクラウドファンディング支援者に送る企画も同時進行した。

こうして誕生したバージョンが
「1979年日本初公開復元版」なのである。

先に述べた通り「ゾンビ」の「1979年日本初公開復元版」は
1.ゴア描写の表現規制
2.要らん「説明」の追加
3.ラフ過ぎる字幕の復活
等々言語道断の内容であり…。
ヘレンケラーもビックリの何重苦も背負っており…。
一言で言ってしまえば「道楽」の産物なのである。

まあね。
僕も5年前(2019年)に
その「道楽」に加担してクラウドファンディングに参加し
今こうして「復元版」のブルーレイを所持している次第である。

今では本「復元版」ブルーレイには
大変なプレミアが付いてきっわっめってっ入手困難であり
オークションサイトでは
目玉が飛び出す様な金額で取引されている。

「道楽」に費やす金に糸目をつけないのが
「道楽の本質」である事の証明となっているのである。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?