アルフレッド・ソウル監督の映画「アリス・スウィート・アリス(1976年)」レビュー「カイゾクの国とは…ニホンジンという蛮族とは…決して交渉のテーブルに着席出来はしないのだ…」
教会の聖餐式で発生した殺人に端を発する連続殺傷事件。
事件の影に黄色いレインコートに奇怪な面を被った何者かが見え隠れする…
本作で重要なのは
犯行に使用された凶器を狂気と共に「継ぐ者」がいた描写。
ブックレットを拝読し…特典映像を拝見し…
本作が1961年設定の理由を成程と思ったが,
ソレは…「理由の全て」ではないでしょう…?
監督…。
僕は前年(1960年)に
ヒッチコック監督の「サイコ」が公開されたコトが重要なのだと感じた。
監督なりの「気違い(=サイコ)の物語」を描きたい意欲の表れを感じた。
ひとりの気違いから次の気違いへの凶器と狂気の魂の継承の物語。
ソレは即ちヒッチコックと「サイコ」の狂気と凶器を継ぐのは…
このオレなのだと言う…監督の強い強い強い自負心の表れなのだ。
真犯人がヤキモチ焼きで一途な萌えキャラとして描かれ…
本作で唯一感情移入出来る人物となっている。
真犯人が懸命に必死に生きる様が他人事とは思えず…
思わず応援したくなる愛敬がある…
「犯行動機」は…
「そんなコトでぇ~?」と絶叫される向きも多いだろう…。
コオロギくん…コレはスラッシャー映画なのだよ…?
スラッシャー映画の犯人はひとり残らずキチガイで…
「犯行動機」なんて…どうでもいいのだよコオロギくん…
本作は…ブルック・シールズのデビュー作らしいが…
真犯人に最初に惨殺される役を好演している…
誰にだって「最初」はあり…
スラッシャー映画で…
「最初に惨殺される役」と言うのは…
実は一番目立つ賓客待遇なのだよコオロギくん…
アウタージャケットには
「日本初のオフィシャル商品化!」
と高らかに謳われている。
本作品は…日本国内で海賊版が横行していて…
ソレを知った権利者側が激昂し…
日本国内ソフト化の交渉は決裂し…
日本でのブルーレイ化は長らく実現しなかった…
カイゾクの国とは…
ニホンジンという蛮族とは…
決して交渉出来ないのだ…。
このたった1行を入れる為に6年かかった事を思うと,
是空さんがアンオフィシャル商品に対して冷静さを欠くのは当然で…
同時にまた…是空さんの矜持を感ずる…。
ブックレットは面白くて読み易くて為になる三拍子揃った充実の内容。
…何でこんなに素晴らしい内容が…初回製造分限定なのか…
是空さんの仕事には大いに敬意を表するが…
「ファンの囲い込み」が過ぎると…
「アリス・スウィート・アリス」の…
ブックレットが付属しない
「普及版」の発売の一報を聴きながら思うのである…。
1961年設定で字幕翻訳が精神病院→施設,
精神分裂症→統合失調症となり残念。
「映画の中の時代」の時代考証を鑑みるに…
例え現在では不適切でも…
不適切な呼称を用いるのが…
僕は映画に携わる者の「誠意」だと思っているよ…
是空さん…。
でもね…是空さんの…
「サスペリアPART2」の4Kでは…
「不適切な表現」を…
バンバン使ってくれて嬉しいよ是空さん…。