見出し画像

映画「ベニー・ラブズ・ユー」レビュー「僕が「世界」に何も働きかけてないのに「世界」が僕を認識出来る訳ないじゃん!」

主人公のジャックはオモチャのデザインをしている
35歳独身・いい年して親と同居&親離れできない&童貞&TVゲームが趣味で
彼女が出来ても親離れ出来てない彼を見てドン引きして別れる…。
…要するに「僕達」な訳で彼の唯一のトモダチは
ママが子供の頃に買ってくれた縫いぐるみの「ベニー」だけで
リアルトモダチはいない。

彼の35歳の誕生日にパパとママが豆腐の角に頭をぶつけて死んで
彼には家のローンだけが残った。
ローンが週末までに払えねばこの家を追い出させる上,
会社ではうだつが上がらず社長から給料を3分の2にカットされた上,
週明けまでにいいアイディアを出さねば解雇する旨,最後通告を下される。

にっちもさっちもどうにもこうにも行かない日々。
だがそんな彼の苦境を縫いぐるみのベニーが救い始める。
ローンの催促人を殺し
彼の元彼女を殺し
彼の社長の犬を殺し
彼の社長を殺し…。

冷静に考えてだねえ!
ジャックの心中にベニーがいて
ベニーは「彼の一番の友達」って設定で
ジャックが苦境に陥ると
彼の心中の「ベニー」が目覚め,
彼がベニーの仮装して
ローンの催促人を殺し!
彼の元彼女を殺し!
彼の社長の犬を殺し!
彼の社長を殺してるに決まってんじゃん!

要するに!
ジャックはノーマン・ベイツで
ベニーの仮装して人や犬を殺してるサイコ(=気違い)なんだろ?
って話ですよ!

この話の脚本読んだ出資者もそう思った筈で
その疑問に対するカール・ホルト監督の回答が

「オレ(ジャック)はノーマン・ベイツじゃない」

だって。
信じられる訳ないだろ!
そしたらさあ登場人物が皆が皆ジャックを庇ってさあ
警察もグルになって殺人事件の真相を隠蔽し
彼を無罪にして新しく出来た彼女とベニーを車に乗せて
新天地に向かうと言うね…。

「皆も子供の頃からのトモダチを捨てちゃダメだぞ!」

ってジャックが急に全国のよい子に向かって語りかけるっちゅうね…。
あのさあ!コレで「いい話」の心算!?
なんで気違いに皆優しいの?
なんで社会全体で気違いを庇うの?
殺された人たちや殺された人たちの家族の気持ちは
一切斟酌しないってどういうコトなの!?

いやいやいやいやいやいやいやいや!
なあ?なあ!?おっかしいだろこの話!

今の世の中って気違いを気違いだって裁けないの!?
今は優しさの時代なの?

うーん…到底納得出来ないなあ…。
最後にジャックが出刃包丁を握ったとき
ジャックの心象風景ではジャックがベニーを出刃包丁で刺殺して
警察の客観風景ではジャックが出刃包丁で自分を刺して死に
「ベニー」もまたこの世から永遠に消え去って終わると思ったのに
そうならなかった。

ジャックがノーマン・ベイツでないと言うのなら!
人や犬を殺してたのは縫いぐるみだって与太話を信じろって言うの?
ジャックの鬱屈と殺意を斯くも理解して
彼の気持ちを代行するトモダチなんている訳ないじゃん。

彼は生まれてこの方ひとりもトモダチがいなかったし
これからもきっといない。
彼は自分で自分を愛するトモダチを演ずる他無かったんだ。
コレが僕が到達した本作品の「真相」。

彼が35歳となる今の今まで
彼を放置し続けて来た「社会」が!「周囲」が!
急に彼に対して優しくなる「理由」なんてありません。
彼は子供の頃からすっこっしっも変わってない。
「世界」が急に彼を愛し始める「世界観」が!
僕には到底受け入れられないのです。

僕が「世界」に何も働きかけてないのに
「世界」が僕を認識出来る訳ないじゃん!

要するに!気違いが!
「僕はノーマン・ベイツみたいな気違いじゃない」って言ったら!
「せやな。本人が気違いじゃないって言ってるんだから信じます」
言うて気違いの人殺しの犯行を世界全体で隠蔽し庇う
世界観が一番気違いだってコト!
「客観」って概念がない世界観に震えるよ!

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?